【災害支援で活躍】歯科衛生士インタビュー「困難の先に大きな“財産”が得られた」

口腔ケアのプロとして、活躍のフィールドがどんどん広がっている歯科衛生士。
一般の歯科診療所以外で働いている方や、プラスアルファの専門性を身につけた方など、資格を生かしてさまざまなキャリアを描いている先輩たちに話を伺いました。

地震や津波、豪雨などの災害に見舞われたとき、医療・介護の現場は待ったなしの対応を迫られます。食生活も一変してしまうことから歯科衛生士が果たす役割の重要性が、近年ますます注目されています。
2021年に発生した東日本大震災で被災地支援に携わった谷恭子さんにお話を伺いました。

*こちらは、2020年3月発行「就活BOOKクオキャリア春号」掲載記事を再編集したものです。掲載情報は当時のものとなります。

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プロフィール

気仙沼市立病院での口腔ケア介入

谷 恭子さん(Tani Kyoko)
気仙沼口腔ケア・摂食嚥下・コミュニケーションサポートチームメンバー

大阪歯科衛生士専門学校(2002年卒)/一般歯科・矯正歯科・訪問歯科などを経て、2011年より災害支援に携わる。趣味は「子育て」で、毎日3人の子どもに幸せをもらっている。大阪府歯科衛生士会所属/日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士/放送大学教養学部 生活と福祉コース学位取得

困難の先に大きな“財産”が得られた

理屈じゃなくて体が動いていた

チーム“ふるふる隊”と気仙沼の仲間たちと

2011年3月11日、東日本大震災が発生。当時介護施設での往診に携わっていた谷さんは、その年の7月に宮城県気仙沼市を訪れた。きっかけは、被災地で歯科衛生士が必要だと、友人から聞いたこと。

「理屈じゃなくて、体が動いていました。困っている人がいるなら行こうという、自然な感覚ですね」

支援に入ったのは、かろうじて大きな被災を免れた総合病院や介護施設など。圧倒的に人手が足りず、口腔ケアも行き渡っていなかった。

「全国から集まった医師や看護師、管理栄養士などと即席チームを編成し、口腔ケアや摂食嚥下指導を行いました。初めは10日間。その後も1ヶ月おきに1~2週間ずつ、数えきれないほど訪れました」

気仙沼市の内陸部にまで流され座礁した大型漁船。

被災地での口腔ケア介入は準備を整えることから。介入前に現地の方と物品のチェックやカンファレンスを行った。

チームの力 歯科衛生士の力を実感

他職種と連携しながら、覚醒を上げて口腔ケアを行い、嚥下評価。“食べる”をチームで支える。

最初から続けられると思って支援を始めたわけではない。

「当時、私の歯科衛生士としてのキャリアは約10年。何でもできると思って現地に入りましたが、何もできない自分に打ちのめされました。医療チームの一員として、口腔だけでなく全身の管理をしなければいけない。物品も限られている。余震も多く、初日は不安でわんわん泣いたのを覚えています」

谷さんを救ったのは、チームの仲間だった。「今からできるようになればいいのよ。また一緒に来よう」と声をかけられ、再び前を向けたという。それからは〝歯石を取って、歯磨きのやり方を教えるだけ〟という今までの仕事観から大きく変化。目の前の人を良くするためのケアがしたいと必死で取り組んだ。

「自分が勉強してできることの幅を広げれば、こんなに患者さんの状態も良くなるんだと実感しました。大変さはあってもやりがいの方が大きかったですね」

人を助けたいという想いに突き動かされて行った場所で、人を助ける難しさと喜びを知り、仲間と協働することで大きく成長できた。

「日常から一歩踏み出して飛び込んでみたら、歯科衛生士という仕事の奥深さや楽しさがわかるようになりました。災害支援を通じて得た人のつながりが、私の財産です」

緊張を伴う、全身管理が必要な患者さんへの処置。ここでの口腔ケアは清掃だけでなくリハビリテーションも兼ねている。看護師との二人三脚で質の高いケアを実現する。

谷さんと共に気仙沼で支援にあたり、活動を後押ししてくれた看護師・小山珠美さんの著書。

谷さんがデザインした、気仙沼支援活動チームTシャツ&パーカー/在宅医療に特化した医療支援団体「気仙沼巡回療養支援隊」。その特別活動として発足した、医師・古屋聡氏が率いる口腔ケア・食支援チーム「気仙沼口腔ケア・摂食嚥下・コミュニケーションサポート(通称:ふるふる隊)」のメンバーとして支援活動を行った谷さん。ふるふる隊では、歯科医師や管理栄養士、言語聴覚士など多職種と連携し、地域施設での口腔ケアや講演活動に取り組んだ。

教えて! 谷さん

印象に残っている出来事は?

ずっと喋らなかった患者さんがポツンと「ありがとう」と言ってくださったときには、鳥肌が立つほど心が震えました。また、ほとんど口から食事がとれなかったおばあちゃんが、ケアを通して『おいし』とゼリーを食べてくれたときも、とてもうれしかったですね。歯科衛生士ってスゴいな! ってハマっちゃいました(笑)。

災害支援にはどのような準備をしている?

被災地では誤嚥性肺炎を繰り返してしまう方も多く、口腔ケアに加えて摂食嚥下指導のスキルが役立ちます。私の場合は、歯科衛生士会や急性期病院の研修に参加して身につけました。また、災害はいつ起こるかわからないもの。歯科衛生士会を通して医療職同士のネットワークを築いて、普段から情報を得るようにしています。

 

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