歯科衛生士が妊娠したらやるべきこと|産休前の準備やもらえる手当も解説!

歯科衛生士が産休に入る前にすべきことと受け取れる手当について解説しています。記事の後半では、産休が取りやすい歯科クリニックの特徴や、産休明けの働き方についても解説しているので、ぜひ参考にしてください。

妊娠判明から臨月までにやるべきことリスト

やるべきことは以下の表のとおりです。順番に解説していきます。

妊娠初期
(1~4ヶ月)
・妊娠報告
・いつまで働くかについて相談
妊娠中期
(5~7ヶ月)
・患者さんへ後任の歯科衛生士を紹介
・引き継ぎ作業
妊娠後期
(8~10ヶ月)
・引き継ぎの最終確認

妊娠初期(1~4ヶ月)

歯科衛生士は立ち作業が多く肉体的な負担が大きい仕事のため、つわりや体調不良によって、これまでどおり働けなくなる場合があります。
さらに急な体調不良によって出勤できず、他のスタッフの業務に支障をきたすことも少なくありません。
特に小規模なクリニックではその傾向が顕著です。

スタッフにフォローや人員補充が必要になる場合があるため、胎児の心拍が確認できる妊娠6週目を目途に、妊娠の報告をするようにしましょう。

まだ妊娠継続に不安もあるかと思いますが、自分はもちろん、お腹の赤ちゃんやスタッフのためにも、可能な範囲で早目に報告することが大切です。

マタニティ白衣はこの時期に手配をしておきます。

いつまで働くか事前に相談

人によって体調不良の度合いも異なりますし、職場環境ごとに妊娠への理解度も異なります。
産婦人科の先生にも相談しながら総合的に判断して、いつまで働くのかを慎重に検討しましょう。

妊娠中期(5~7ヶ月)

安定期に入り、比較的働きやすくなります。後任への引き継ぎの目途も立てやすくなるので、この時期に引き継ぎを始めておきましょう。

妊娠中期になると、初期と比べて流産の可能性は低くなります。

患者さんへ後任の歯科衛生士を紹介

継続して診ている患者さんには、産休に入る時期を伝えましょう。
特に担当制を導入している医院では、後任の歯科衛生士と患者さんの3人で顔合わせを行うことをおすすめします。

引き継ぐときは口腔内の状況だけでなく、服薬、家庭環境、仕事環境など、患者さんのバックグラウンドも伝えるのがポイントです。これまで患者さんが話したことが後任に引き継がれていると、患者さんは安心して通い続けることができます。

引き継ぎはわかりやすく具体的に

引き継ぎは口頭ではなく、資料に残すのが基本です。産休が始まる日から逆算して、いつまでに完成させればよいかを決めておきましょう。

ざっくりとした内容ではなく具体的に文章化・図式化しておくとスムーズです。

妊娠後期(8~10ヶ月)

いよいよ出産までもうすぐです。
毎日の仕事の中で、引き継ぎの抜けや漏れがないかを確認していきましょう。

つわりは軽くなり割と自由に動ける期間ですが、無理をし過ぎないよう注意が必要です。

産休予定前でもつらいときは相談を

妊娠中は何が起きるかわからないもの。
産休の開始前でも体調が急変する可能性があります。

つらくなったときは、すぐに医院に相談しましょう。時短勤務や、産休の前倒しなどの対策をしてくれる可能性があります。

産休は2種類ある

「産休」の正式名称は「産前産後休業」。ひとことで「産休」と言っても、実は産前休業と産後休業の2種類あります。

産前休業 出産予定日を含む6週間以内(双子以上は14週間)
産後休業 8週間(6週間経過後は、医師が支障ないと認めた場合に限り勤務可能)

産前休業

産前休業とは、出産予定日を含む6週間(42日)以内に取得できる休みです。双子以上を妊娠している場合は、14週間(98日)以内まで期間が伸びます。

実は産前休業の取得は「任意」であり「義務」ではありません。そのため取得を希望する場合は、出産予定日の6週間(双子以上の場合は14週間)前から任意の開始日を申請する必要があります。

産後休業

産後休業は、原則として産後8週間を期間とする休みです。産前休業と違い、こちらは法律で「就業させてはならない」と定められているため、申請は必要ありません。

本人の希望があり、医師に支障がないと認められた場合のみ、6週間経過後から復職することが可能になります。

歯科衛生士が受け取れる手当の種類

妊娠・出産により休業する際は、一定の条件を満たすと手当が発生します。ここでは、歯科衛生士が受け取れる手当の種類を紹介します。
それぞれの保険別に給付内容が異なりますので、あわせて説明します。

出産育児一時金

公的医療保険(健康保険や歯科医師国保・歯科健保、国民健康保険など)に入っている人が出産したときは、出産育児一時金が支給されます。
この金額は、どの公的医療保険であっても全国一律です。

健康保険法施行令の改正により、2023年4月より出産育児一時金の金額が改定され、これまでの42万円から50万円に増額されることが決まりました。


<もらえる要件は?>
出産育児一時金を受け取るためには、被保険者または家族が妊娠4ヶ月(85日)以上で出産をするという条件があります。妊娠4ヶ月を過ぎていれば、死産でも支給対象となります。
<どうやってもらえるの?>
支給方法は、直接支払制度と受取代理制度の2つがあります。
【直接支払制度】
加入している健保組合や国保組合が医療機関に支給金を直接支払う制度です。2023年現在は99%の方が該当の医療機関で出産をしており、基本的には直接支払制度を利用することになります。
手続きは簡単で、出産する医療機関にて保険証を提示し「支払業務委託契約書」などにサインをするだけです。
【受取代理制度】
直接支払制度未導入の小規模クリニックで分娩するときは、受取代理制度での受給になります。
「出産育児一時金支給申請書」に必要書類を添え、各健康保険窓口へ提出します。

<退職しても受け取れる?>
退職日までに1年以上継続して公的医療保険の加入者であれば、資格喪失日から6ヶ月以内の出産に限り、出産育児一時金が支給されます。

退職をして夫など家族の扶養に入る場合は、家族が加入している健康保険組合の「家族出産一時金」か、自分が加入していた健康保険組合の「出産一時金」のどちらかを選んで受け取れます。どちらも同額で、重複して受給はできません。

出産手当金

健康保険(協会けんぽなど)に入っている人が出産のために仕事を休んでいる間、給与の代わりに支給される手当が出産手当金です。
産休中に給与の支払いを受けなかった場合にもらえます。

なお各県の歯科医師国保・歯科健保でも同様の制度があります。
ただし歯科医師国保の場合は各組合(都道府県単位)で制度が異なり、任意支給となっています。そのため、気になる人はご自身が加入する都道府県の歯科医師国保組合の制度を確認してください。

また、出産育児一時金と異なり、国民健康保険の場合には支給されません。

以下の要件等については健康保険のうち協会けんぽのケースについて紹介します。


<もらえる要件・期間は?>

  • 産休中に給与を受け取っていない
  • 妊娠4ヶ月(85日)以降の出産
  • 出産日(実際の出産が予定日後のときは出産予定日)以前42日※から、出産の翌日以後56日目までの範囲内 ※多胎妊娠(双子など)の場合は98日
  • 出産が予定日より遅れた場合、その遅れた期間についても出産手当金が支給されます。
<いくらもらえる?>
1日当たりおよそ「日給の2/3×産休日数分」がもらえます。
もらえる日数の上限は、産前42日(双生児以上の場合は98日)・産後56日まで。なおここでの「日給」とは正確には「支給開始日の以前12ヶ月間の各標準報酬月額を平均した額を30日で割った額」になります。標準報酬月額は、各年度や都道府県ごとに異なるので、最新の保険料額表を確認しましょう。自分で計算することもできますが、基本給や住宅手当、通勤手当といったさまざまな要素が絡んでくるため、心配な方は医院に確認した方がよいでしょう。

<退職してももらえる?>
要件を満たせば、退職後も出産手当金がもらえます。
その要件とは

  • 退職日までに1年以上の継続した健康保険の加入期間があること
  • 退職日が産前産後休業の期間内であること
  • 退職日当日に勤務していない(仕事を休んでいる)こと
  • 任意継続被保険者でないこと(※例外あり)

例えば、健康保険の加入期間が1年以上ある女性が妊娠し、産休中に諸事情で退職することになり、そのまま退職日当日も働いていない場合などは出産手当金が退職後も含めて産休期間中の日数分支給されます。

産休が取りやすい歯科クリニックの特徴とは

産休が取りやすい歯科クリニックの特徴を2つ紹介します。
産休は制度として誰でも利用できますが、利用しやすい・しにくい医院があるのが現実です。

新卒で就活中の方・他のクリニックへの転職を考えている方はぜひ参考にしてください。

産休・育休の取得実績がある

妊娠中はもちろん、職場復帰後の働き方や子育てに理解がある可能性が高いです。
中には保育士を配置して、患者さんとスタッフの子供を院内で預かっているという医院もあります。

従業員の人数が多く、規模が大きい

人数の多い大規模な医院であれば、妊娠や出産による欠勤や時短勤務をカバーしやすくなります。
たとえば、歯科衛生士が10人いれば1人抜けたとしても9人でカバーできますが、もし2人しかいない医院で1人抜けたら、単純に残り1人の業務量は倍に。「体調が悪いから休みます」と気軽に言える雰囲気ではないでしょう。

子育てしながらどう働く?

妊娠・出産はもちろん一大事ですが、実は出産後に働き続けることはもっと大変です。
産休、もしくは育休を経て復職する場合は、事前に職場との打ち合わせを行い、勤務スケジュール、仕事内容、育児との両立などについて話し合うことが重要です。

また、最新情報にキャッチアップしていくことも大切です。歯科医療は日進月歩なので、1年程度で技術が大きく発展していることもあります。

とはいえ、出産前とまったく同じ働き方をするのは容易ではありません。
どうしても子育てに、時間的・精神的なリソースを取られてしまうからです。
必要に応じて、時短勤務や勤務日数の調整などを医院に相談してみましょう。

まとめ

働きながら妊娠・出産をするには、職場のサポートを得ることと、公的な支援制度を理解しておくことが重要です。

安心して子供を産み育てられる環境を求めているなら、転職もひとつの方法です。
クオキャリアでは、産前産後休業、育児休業の取得実績がある場合、募集要項に記載しています。
さらに、スタッフ用託児所がある医院をキーワードで検索することも可能です。
クオキャリアは、皆さんが歯科衛生士として長く働き続けられる職場と出会えるよう応援しています。

 

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