私立の歯学部は3000万円かかるけど、どう貯める? 子どもの教育費問題|歯科衛生士の不安をお金のプロに相談してみた!#2
歯科衛生士として働いているけど、他の人はどのくらいお給料をもらって、どんな生活をしているんだろう……?
そんな気になるお金事情について、紐解いていく本企画。現役歯科衛生士さんが、ファイナンシャルプランナーの小沢美奈子さんにお金の悩みを相談する連載です。収入や支出を見直しながら、今後のお金の使い方について考えていきます。
今回のお悩み相談者は、山田さん(仮名)。パートナーが開業した歯科医院で働いていて、すでに貯金や投資もしているとのことですが、将来に不安を抱えているそうです。
第1回 パートナーが開業医でも、お金持ちとは限らない!?
第2回 私立の歯学部は3000万円かかるけど、どう貯める? 子どもの教育費問題|(こちらの記事)
第3回 保険の見直し、どうすればいい?(7/22公開)
山田さん(仮名)
25歳。歯科医師の夫と子どもの3人家族。夫との出会いは、新卒時代に勤めていた歯科医院。現在は子育てをしながら、夫が開業した歯科医院で週に2~3日働いている。月の収入は10万円(額面)。老後や子どもの教育資金のために貯金をしているが、いくら貯めても不安な気持ちがある。
ファイナンシャル・プランナー 小沢美奈子さん
大学卒業後、損害保険会社(現あいおいニッセイ同和損保株式会社)に就職し、事務、社員教育、講師など幅広く経験。その後転職を経て、2015年に独立。日経WOMANなどでもマネー記事を執筆するなど、マネーライターとしても活動中。
https://kandbplanning.org/
目次
子どもの教育費、いくらあれば安心? 小さいうちに貯められる仕組みを作ろう
山田さん 子どもの大学進学に備えて教育費を貯めておきたいのですが、いくら用意しておけば安心できますか?
FP小沢さん 一般的に、子どもの教育費はトータルで400〜500万円ほど貯めるのが理想だとお伝えしています。そのうちの約240万円(※)は児童手当でそのまま貯められると思います。
山田さん 児童手当とは別に、約300万円を目標に貯金をすればいいんですね。
FP小沢さん ただ、それは一般的な4年制大学に進学すると想定した場合です。もしお子さんもパートナーのような歯科医師を目指し、私学の歯学部に進学するとなれば、6年間で3000万円かかると言われています。さらに塾に通わせたり1人暮らしをさせたりすると……もっとお金が必要になることも考えられます。
山田さん そういえば、夫も歯学部でそのくらいのお金がかかったと言っていました。もっと頑張ってお金を貯めないと! それにしても、気が遠くなる額ですね。
FP小沢さん 教育費は青天井なので、かけようと思えばいくらでもかけられるんです。子どもの意思が定まっていない幼少期の頃から教育費にガンガンお金を使って、先細りになってしまっては本末転倒です。
山田さん たしかに……。
FP小沢さん 教育費を貯めるのは、山田さんだけが頑張るのではなく、夫婦で協力していくことが大事です。お子さんが大きくなったら「パパみたいな歯科医師になりたい!」という目標が自然とできるかもしれません。私立歯学部に進学する可能性も出てくるようでしたら、貯金が必要です。山田さんの場合はまだお子さんが小さくて教育費がかからない時期だと思うので、今のうちに集中的に貯めておけるとさらに良いと思います。
※:2024年6月時点情報より算出。児童手当は中学校卒業までの児童を養育している世帯主に支給される制度ですが、2024年10月以降は対象が高校生卒業までの児童が対象となります。
NISAや個人向け国債を活用して貯めるのもひとつの手
山田さん 子どもの教育費は、どのように貯めるのが良いのでしょうか? 以前は子どもの資産形成のためのジュニアNISAがありましたが、終了してしまいましたよね。学資保険も検討しているのですが、単純に積み立てるものではなく、別途保険会社への支払いが発生すると聞いて悩んでいます。
FP小沢さん その通りです。よくご存じですね。学資保険は、毎月の保険料を支払うことで進学学資金や満期学資金が受け取れる制度。劇的に増えることは期待できませんが、万が一親が亡くなってしまった場合、それ以降の保険料を支払わずに保障を受けられるというメリットはあります。
山田さん なるほど。ちなみに、子どもの名義で現行のNISAを運用することはできないのでしょうか?
FP小沢さん 2024年1月から始まった新NISAは18歳未満は利用できない制度となっています。なので、NISAを活用するなら親の名義で運用してお金を貯めていくのが良いと思います。ただし、教育費として貯める分の全額を投資でまかなうのはちょっと危険ですね。
山田さん えっ、そうなんですか?
FP小沢さん NISAで貯めたお金は変動するので、もし金融ショックが起こってNISAの資産が半分になってしまったとしても、受験費用や学費の支払いは待ってくれません。例えば学資保険200万円、NISA200万円で計400万円を用意する、といった考え方も良いと思います。分散するのが大事です。
山田さん どれかひとつを活用するのではなく、並行して運用するという考え方もあるんですね。
FP小沢さん さらに、国が発行する債券である個人向け国債を活用するのもひとつの手です。個人向け国債は3年、5年、10年の3種類がありますが、10年の場合は世の中の情勢に応じて半年毎に適用利率が変わるため、受取利子が増えることがあります。さらに元本保証があるので、比較的安心して運用できると考えられます。
山田さん 教育費の資産運用は学資保険しかないと思っていましたが、いろんな方法があるんですね。それぞれのメリットを考えて、夫と検討してみます!
FP小沢さん 山田さんの場合は、子どもの教育費のピークとなる18歳までは10年以上あります。今の段階では、NISAに積極的に投資しつつ、お金が減る心配のない預金口座や個人向け国債にもお金を入れておいても良いと思います。まずは目標金額を決めて、そこに向けてどのように貯めていくかを夫婦で話し合っていきましょう。
夫婦共有の資産を貯める口座はメガバンクがおすすめ
FP小沢さん 現在、児童手当はどのように管理していますか?
山田さん 夫の口座に振り込まれるようになっています。なので、児童手当と夫の貯金額が混ざっている状態なんですが、しっかり管理するためにも子ども用の口座を新たに開設すべきでしょうか?
FP小沢さん まずは児童手当の貯金の口座を分けることから始めましょう。児童手当を貯めるために、お子様名義の口座を作る方法もよいかもしれませんが、管理のしやすさを考えると親御さん名義の口座に貯めておいた方がよいと思います。
山田さん ちなみに、夫婦で共用の口座を作れる仕組みはあるのでしょうか?
FP小沢さん 銀行口座は基本的に連名で開設することはできないので、どちらかの名義で作った口座を共用にしている方が多いです。共用の口座はお二人が使いやすい銀行で良いと思いますが、使い勝手の点からすると、メガバンクがおすすめです。メガバンクは全国に支店がある上に、営業時間内ならATMの引き出し手数料が無料になることが多いからです。
山田さん ネットバンクはおすすめできないということですか?
FP小沢さん そんなことはありません。ネット銀行はスマホやパソコンですべて管理できるというメリットがあります。一方、現金を引き出す場合には、一定の回数以上はATMの手数料がかかってしまう場合がほとんどです。いずれにしても、ご夫婦で話し合って、生活スタイルに合わせて使いやすい銀行を選ぶとよいでしょう。
FP小沢さんのまとめ:教育費は目標金額を決めて、分散投資で貯めることが大事
子どもがどんな将来を目指すのかわからない状況の中、教育費の目標を決めるのは難しいかもしれません。夫婦でしっかりと目標や計画を立て、無理のない範囲で貯めていきましょう。また、教育費は情報戦でもあります。奨学金をはじめ、教育費は制度などを活用することで抑えることも可能です。夫婦で常にアンテナを貼っておき、制度も活用しながら教育費を貯めていきましょう!
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