診療分野を知ろう!〈小児歯科編〉 |歯科衛生士知っとこ!職場の見極め塾#6

こんにちは!ライターのヤナギです。 これまでに10年以上、クオキャリアでたくさんの歯科医院を訪問したり、記事を執筆したりしてきました。
その経験から、歯科衛生士の皆さんに「自分に合った職場を選ぶためのヒント」をご紹介します。

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歯科医院の「診療科目」「診療分野」とは

街を歩いていてクリニックの看板を見ると、「内科」「眼科」「耳鼻咽喉科」など、「診療科目」が書いてありますよね。
「何のお医者さんかわからない」ということはほとんどないと思います。

同じように、歯科医院として標榜(ひょうぼう)できる、つまり、看板に掲げられる診療科目はいくつあるでしょうか?
答えは、「歯科」「小児歯科」「歯科矯正科(矯正歯科)」「歯科口腔外科」の4つです。
そして歯科医院のホームページなどでは、「予防」「歯周病治療」「審美」「インプラント」など、さらに細かい診療分野が記載されているのをよく見かけます。

こうしたホームページを見てもわかるように、歯科医院の中には、たくさんの診療分野を幅広く手掛けているところと、「矯正専門」など、ある分野の診療を専門的に行っているところがあります
また、幅広い分野の診療を提供しつつ、その中で得意分野を持っている医院も多いです。

こうした医院それぞれの診療内容によって、経験できる症例や学べることは大きく異なります
そのため、「診療科目」や「診療分野」は、職場選びにおいて欠かせないチェックポイントの一つです。

診療分野にアンテナを立ててみよう

さて、この記事を読んでくださっている皆さんは、興味のある診療分野はありますか?
「絶対に〇〇がやりたい!」と、すでに心に決めている方もいるかもしれません。

一方で、「まだわからない」という方もきっと多いでしょう。
「最初はいろいろ経験してみたい」という声もよく耳にします。
もちろん、まずは幅広く診療をしている歯科医院に就職し、働く中で自分が向いている分野を探っていくというのも一つのやり方です。

しかし、就職前にある程度「やってみたい診療分野」に目星をつけておくと、その分野を得意としていることを基準に歯科医院を探せたり、就職してから「あれ?この分野の症例は意外と少ないぞ」というミスマッチを防げたりといった良さがあります。
幅広く学ぶ気持ちは持ちつつも、「自分はこの分野に興味があるな」というくらいのアンテナは立てておくのがオススメです。

さらに、歯科衛生士としての人生を長い目で見ると、何か一つ、自分の得意な分野を持っているというのは大きな「強み」になります。
患者様から信頼を得られるのはもちろん、自信や仕事の充実感につながったり、転職の際に有利になったりと、さまざまなメリットがあります。
そして、先ほども書いたように、就職先の診療内容によって、どのような「強み」を身につけられるかが大きく左右されます。
そう考えると、早い時期から診療分野についての理解を深めておくことはとても大切なのです。

そこで、このコラムでは数回に分けて、各診療分野の特徴や仕事内容を詳しく掘り下げてみたいと思います。
今回取り上げるのは「小児歯科」です。
前置きが長くなりましたが、ここからが本題です!

そもそも、小児歯科とは?

小児歯科とは、その名の通り、「患者様が子どもである歯科診療」のことです。
なお「子ども」の範囲は、実は厳密に決まっているわけではありません
下は歯が生え始める生後半年程度から、上は中高生くらいまでが一般的です。
中には、「中学生からは一般歯科」とする医院や、「親知らずが生える頃までは小児歯科」という考え方もあります。

また、「マイナス1歳」という表現で、妊婦の歯科検診や指導を行っている医院もあります
妊娠中に口腔ケアを行うことによって子どもに虫歯がうつりにくい環境を整えたり、授乳や抱っこの仕方を指導することで、赤ちゃんのお口の成長を正しく導いたりするものです。

このように見てみると、「小児歯科」の対象年齢は意外と広いものです。
いわゆる「子ども」だけでなく、高校生や妊婦も対象となると、小児歯科のイメージが少し変わってきませんか?

小児歯科と一般歯科の違い

ここで、小児歯科と一般歯科の違いを考えてみましょう。

基本的なところでは、「子どもの口腔内を診るには、専門の知識が必要」ということが挙げられます。
「乳歯が生え、顎が成長し、永久歯に生え変わる」というダイナミックな変化の過程をサポートするためには、歯並びが完成した大人の診療とは違う専門的な知識が必要となります。
そのため、小児歯科を専門に行っている歯科医院が多く存在します。

また、言葉が通じない、長時間じっと座っていられない、怖くて泣いてしまう、など、コミュニケーションの面でも大人とは違う部分があります
この点は歯科衛生士が大きな役割を果たす部分となりますが、これについては後で詳しく取り上げます。

加えて、実際に取材に訪れた際には、次のような設備面での違いも感じます。

・楽しいイメージを持ってもらえるような外観やインテリアになっている。
・診療台の天井にテレビをつけるなど、子どもの興味を惹く工夫がされている。
・子ども専用の歯磨きコーナーや口腔筋のトレーニングルームなど、予防関連の設備が多い。
・ガチャガチャや院内通貨(貯まると賞品と交換できる)など、「ご褒美」の仕組みがある。

中には、アスレチックや森があるなど、まるでテーマパークのような内装の医院も!
さらに、リトミックを取り入れたり、季節のイベントを開催したりと、歯科と直接は関係ない取り組みを行っている医院も多いです。

小児歯科での歯科衛生士の役割

小児歯科での歯科衛生士の主な業務内容は、TBI、フッ素塗布、シーラント、MFTなどの口腔筋トレーニング、矯正や治療のアシスト、食事指導などです。
また、幼稚園や保育園で検診や啓発活動を行うなど、院外に出る場面も比較的多めです。
大人の場合に比べて「予防」的な業務が中心なので、小児歯科は歯科衛生士が主体的に活躍できる代表的な分野です。

そして何より、小児歯科の現場で歯科衛生士が果たす最も大きな役割は、子どもとのコミュニケーションだと思います。
子どもの気持ちに寄り添った声かけや対応によって恐怖心を取り除き、「お姉さんに会いに歯医者さんに行きたい!」と思ってもらうことが、一番の役割なのではないでしょうか。

また、子ども本人に加えて保護者とのコミュニケーションが不可欠なことも、小児歯科の大きな特徴です。
歯科医師にはしにくい相談に乗ったり、丁寧な説明で不安を解消してあげたりすることも、歯科衛生士の重要な役割です。

小児歯科ならではの“やりがい”

小児歯科で働いている歯科衛生士さんにお話を伺うと、皆さん、とても大きなやりがいを感じていることが伝わってきます。

例えば…

「最初は泣いていて診療室にも入れなかった子が、回数を重ねるうちに、自分から笑顔でユニットに座ってクリーニングを受けられるようになった」

「幼稚園児の患者さんから、『おねえさんだいすき』と一生懸命に書いたお手紙をもらった」

「最初は歯磨きを面倒くさがっていた子どもが、キレイに磨いてくれるようになった」

「歯並びにコンプレックスを持っていた子が、矯正治療によって歯並びが良くなったことで笑顔が増え、性格も明るくなった」

「高校生の患者さんが、将来は歯科衛生士になりたいと言ってくれた」

などなど、感動的なエピソードを挙げるとキリがありません!

そして何より、
「子どもの人生がより良いものになるようお手伝いができる」
「将来にわたって健康を守る『土台』を築いてあげられる」
ということが、小児歯科ならではの大きなやりがいです。

 

小児歯科に向いている人って?

ここまで見てきたような特徴を持つ小児歯科ですが、どんな人に向いているでしょうか。

まずはもちろん、「子どもが好きな人」です。
普段から子どもと接することが好きな人は、小児歯科で働くことでハッピーな毎日が送れそうです!

一方で、小児歯科で働いている先輩の中には、「実はもともとは子どもが苦手だった」という人もいます。
しかし、仕事の中で子どもと触れ合ううちに、小児歯科の楽しさややりがいに気づき、熱意が湧いてきたのだそうです。

なお、小児歯科には、保育士や子どものいるスタッフが在籍している場合が多いです。
これまであまり子どもと接したことがない人でも、アドバイスをもらいながらコミュニケーションを取るうちに、無理なく慣れていけるでしょう。
そして小児歯科で身につけた知識やノウハウは、将来自分が子育てをすることになった際にもきっと役立ちますし、同時にプライベートでの育児経験を仕事に活かせるのがこの分野の大きな魅力です。

加えて、日常的に子どもや保護者と接しているからか、小児歯科に力を入れている歯科医院は、ワークライフバランスへの理解が深いと感じます。
家庭と仕事の両立を目指す人にとっても、小児歯科は働きやすい職場なのではないでしょうか。

小児歯科は、今後ますます需要が高まる分野

最近は、子どもの歯の健康に対する保護者の関心がますます高まっています。
特に、早いうちから顎や歯並びの正しい育成を目指す「口腔育成」の考え方が広がっており、口腔筋トレーニングや床矯正などを含めた「小児矯正」に力を入れる歯科医院も増えています。
小児歯科や小児矯正に関するスキルは、今後の歯科衛生士が持っておくと役立つ「強み」の一つと言えるでしょう。

また中には、医療法人の中に小児歯科を専門とする分院をつくったり、一つの医院の中で子どもと大人のスペースを区切ったりしている歯科医院も多くみられます。
そうした法人や医院では、一般歯科も経験しながら、プラスアルファで小児歯科の専門性を身につけられます

「子どもは苦手だから」「あまり接したことがないから」と敬遠するのではなく、一度見学に行ってみると、“自分に合う職場”の選択肢が広がるかもしれません。


ヤナギ

ライター、インタビュアー

2010年よりクオキャリアのさまざまな媒体で歯科医師・歯科衛生士の取材や、求人原稿・インタビュー記事の執筆など、のべ6,000件以上を担当。歯科業界の採用事情に精通している。

 

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