歯科衛生士は女性だけの仕事じゃない! 男性歯科衛生士の現状をまとめました

「歯科衛生士は女性の職業」? いいえ、そうではありません。
生涯有効な国家資格であり、就職先も多い歯科衛生士は、ぜひ男性にも目指して欲しい職業。口腔ケアの専門家として働く男性歯科衛生士の実態を調査しました!

歯科衛生士の男女比率は?

令和2年の調査によると、就業している歯科衛生士のうち男性が占める割合は0.4%。99%が女性となっており、男性歯科衛生士はまだ珍しい存在です。※1

ちなみに令和4年の時点で、全国の歯科衛生士養成校に通う男子学生は95名。平成24年の時点では21名だったため、少しずつではありますが、この10年で約4.5倍に増えている計算になります。※2

全国歯科衛生士教育協議会 令和4年度調査報告よりクオキャリアにて作成

なお、歯科衛生士養成校の中には、設備面の不足を理由として男子学生を受け入れていないところもあります。全国176校ある養成校のうち、男子学生の入学を受け入れているのは121校で、全体の約69%です。※3

※1:日本歯科衛生士会 令和2年 歯科衛生士の勤務実態調査報告書
https://www.jdha.or.jp/pdf/aboutdh/r2-dh_hokoku.pdf
※2・3:全国歯科衛生士教育協議会 令和4年度調査報告
https://www.kokuhoken.or.jp/zen-eiky/publicity/file/report_2022.pdf

男性の歯科衛生士が少ないのはなぜ?

歯科衛生士の職務・資格を定める「歯科衛生士法」が施行されたのは昭和23年。この法律では、歯科衛生士の定義が以下のように定められていました。

“第二条 この法律において「歯科衛生士」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、歯科医師(歯科医業をなすことのできる医師を含む。以下同じ。)の直接の指導の下に、歯牙及び口腔の疾患の予防処置として次に掲げる行為を行うことを業とする女子をいう。”

「第二条に規定する業務を行う男子については、この法律の規定を準用する。」という附則があったため、厳密には女性に限定した職業ではありませんでしたが、本則に「女子」とあることで女性の職業というイメージが付きやすくなったと考えられます。

この定義が正式に見直されたのは、平成26年の法改正。「女子」という表記が「者」に改正され、現在は女性を強調する文言は記載されていません。
なお厚生労働省の調査では、法改正より前の平成24年の時点で43名の男性歯科衛生士が就業していたようです。

男性歯科衛生士のプラスポイント

1.体力面で力を生かせる

特に訪問歯科やスペシャルニーズ歯科では、体力を求められる場面が多くあります。身体が不自由だったり、認知症や知的な遅れから治療に抵抗してしまったりする患者さんの診療の際には、体力・筋力が不可欠。このようなとき、男性歯科衛生士の存在は重宝されるでしょう。

2.歯科衛生士業務の改善に貢献できる

歯科衛生士は女性が多い職業ですが、歯科医院に通われる患者さんは女性ばかりではありません。性別、年齢、職業、家庭環境…いろんな患者さんに対して最適な歯科医療を提供するためには、さまざまな角度からの視点が大切です。
男性歯科衛生士の意見は、診療の質向上に役立つはず。また臨床現場でも、男性の患者さんや小児患者の付き添いで来るお父さんにとっては、男性歯科衛生士のほうが相談しやすい場合もあるでしょう。

3.ほかの職種・業種に比べて規則的な生活を送りやすい

歯科衛生士は、一般的な会社員と比較すると残業が少ない職業。
実際クオキャリア会員の現役歯科衛生士100人にアンケートを取ったところ、「残業はない」と答えた人が4割以上、「月10時間未満」までを含めると8割以上に上りました。「月10時間未満」とはおよそ1日あたり30分未満ということ。一般企業に比べて自分の時間も大事にしやすい傾向にあると言えるでしょう。
【歯科衛生士100人に聞きました】 残業時間は毎月平均どのくらい?

男性歯科衛生士のマイナスポイント

上述したように、歯科衛生士のメリットとして「ほかの職種・業種に比べて規則的な生活を送りやすい」ことが挙げられますが、その反面「たくさん働いて高い収入を得たい」という人にはあまりおすすめはできません。同じ医療系国家資格である看護師と比べると、夜勤や宿直もないため年収は抑え気味ということが多いでしょう。

仕事内容の面では、女性の患者さんの中には、男性に口の中を見られることに抵抗を感じる方もいることが挙げられます。そのため、場合によっては女性患者さんへの対応が限られるケースがあるかもしれません。

また現状、男性歯科衛生士の母数自体が少ないため「同じ職場に男性歯科衛生士がいない」「男性歯科衛生士の仲間を見つけにくい」ということがマイナスポイントの一つ。男性歯科衛生士がいる医院に就活したいと思っても、まだ難しい状況でしょう。
なお就職先探しの際は、歯科衛生士だけでなく男性の歯科医師・歯科技工士の数もチェックするのがおすすめ。男性歯科衛生士がいない場合でも、職場全体の男性の比率によって働きやすさが違うかもしれません。

男性歯科衛生士の勤務先は?

歯科医院以外にも、総合病院や介護施設、保健所などの行政、歯科関連企業などたくさんの活躍の場があります。

また、歯科衛生士の就職先において「男性NG」と書かれている求人は、ほぼありません。
その理由としては、まだ男性歯科衛生士の人数が少ないため、そもそも男性からの応募を想定していない歯科医院が多いというのが一つ。もう一つは男女雇用機会均等法を根拠として、募集・採用時に「性別」を制限することが原則禁止されているからです。

歯科衛生士は社会の口腔ケアへの関心の高まりなどから今後ますます需要が伸びていく職業と考えられるため、男性だから就職しにくいといった心配はいらないでしょう。

歯科衛生士以外のメディカルスタッフの男女比

歯科衛生士は現状では男性が少ない職業ですが、それ以外のメディカルスタッフ(歯科医師を除く医療従事者)の男女比はどうなっているのでしょうか?
同じ歯科職種である歯科技工士や、病院でリハビリテーションを行う理学療法士は男性比率が高めで、年収の水準は歯科衛生士と大きく変わりません。医療業界で働きたいという気持ちがある方はそれらを比較検討して、自分の向き・不向きに合わせて進路を選ぶと良いでしょう。

※4:日本歯科技工士会 2021年度 歯科技工士実態調査報告書
https://www.nichigi.or.jp/about_shikagikoshi/2021jittaichousa_gaiyou.html
※5:厚生労働省 令和2年度 衛生行政報告例
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/20/dl/kekka1.pdf
※6:日本理学療法士協会 統計情報
https://www.japanpt.or.jp/activity/data/
※7:日本作業療法士協会 2019年度 会員統計資料
https://www.jaot.or.jp/files/page/jimukyoku/kaiintoukei2019.pdf
※8:日本言語聴覚士協会 会員動向
https://www.japanslht.or.jp/about/trend.html

まとめ

歯科衛生士は、資格があれば性別を問わず活躍できる職業です。

また、現状ではまだ男性歯科衛生士のロールモデルが確立していないため、自分で働き方や仕事内容を模索できるのも大きな魅力。クオキャリアpocketには、男性歯科衛生士のインタビューも掲載されています。

多職種連携の中心で 歯科衛生士が活躍する道を拓きたい 男性歯科衛生士インタビュー
女性のイメージが強い歯科衛生士ですが、男性だからこそ力になれる場面もたくさんあります。
「将来性のある仕事がしたい」「予防医療に関心がある」そんな方は、ぜひチャレンジしてみてくださいね。

 

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