歯科衛生士の主な転職理由は? 面接ではどう伝えれば良い?
歯科衛生士として仕事をする中で、ライフステージの変化や新たな目標の設定、人間関係のトラブルなど、さまざまな理由で転職を考えることもあると思います。
今回は、自分がいざ転職を決めたときに、現在の職場や転職希望先に、どのようにその理由や思いを伝えれば良いのかのヒントをご紹介します。
例文も豊富に掲載していますので、ぜひ参考にしてください。
目次
歯科衛生士の転職の実態
まずは、転職をしたことのある歯科衛生士がどのくらいいるのか、また、その理由はどのようなものなのかを見ていきましょう。
転職をしたことのある歯科衛生士の割合
これは、日本歯科衛生士会に所属する歯科衛生士の転職回数を表したグラフです。
出典:日本歯科衛生士会「歯科衛生士の勤務実態調査報告書 令和2年3月」
これを見ると、転職を1回でもしたことのある歯科衛生士は76.4%と、約4分の3に上ります。
多くの歯科衛生士が転職を経験していることがわかります。
歯科衛生士の転職の主な理由は、大きく分けると4つ
次に、転職の理由を見てみましょう。
出典:日本歯科衛生士会「歯科衛生士の勤務実態調査報告書 令和2年3月」
上記が、転職理由の上位7位までです。
そのほかに、「同僚との人間関係」や「先輩との人間関係」、「家庭の事情」、「長時間勤務」なども挙げられています。
これらの理由をカテゴリーに分けてみると、
(1)ライフステージの変化に合わせた転職
(2)人間関係の改善を目指した転職
(3)仕事内容の変化やスキルアップを目指した転職
(4)勤務条件の改善を目指した転職
の、大きく4つになりそうです。
これらの理由の背景には、
・歯科衛生士は女性がほとんど
・歯科医院は一般企業に比べて小規模で、個人経営のことが多い
・専門職である
といった、歯科衛生士特有の環境があると考えられます。
また、歯科衛生士は売り手市場(求職者数よりも、求人数の方が多い)だということも、転職に踏み切りやすい理由の一つでしょう。
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職場への退職理由を伝えるときのポイント
さて、実際に自分が「退職しよう」と決めたとき、現在の職場にどのように伝えるかに悩む人も多いと思います。
そこで、退職理由の伝え方について、ポイントを3つご紹介します。
なお、退職を申し出るタイミングについては、就業規則などで「●ヶ月前まで」と決められていることが多いので確認しておきましょう。
ポイント(1)「ただの悪口」にならないようにする
退職理由を伝える際にやってしまいがちな失敗は、現在の職場を悪く言うことです。
もちろん転職を考えているわけですから、何らかの不満を抱いていることは確かですが、それをただネガティブに伝えてしまうのは、社会人として褒められたことではありません。
また、退職までの残りの期間、自分自身が働きにくくなってしまいます。
加えて、今後も歯科業界という同じ世界で働く以上、勉強会や学会などで、院長やスタッフと再会する可能性があることも視野に入れておきましょう。
そこで、現在の職場のメンバーとの関係をできるだけ良好に保てるよう、転職理由は「ポジティブに」表現することを心がけましょう。
言い換えるときのコツは、「今の職場に対する不満」ではなく、「転職先の職場でどう過ごしたいか」に重点をおくことです。
〈NG例〉「先輩が少なく、仕事をちゃんと教えてもらえないので辞めます」
〈OK例〉「歯科衛生士の人数の多い職場で、自分のスキルを客観的に見て、基本を固め直したいと考えて転職を決めました」
〈NG例〉「アシストばかりで仕事がつまらないので辞めます」
〈OK例〉「歯科衛生士として患者さんと一対一で向き合って、予防や歯周病治療などに取り組みたいと考えています」
ポイント(2)正直に言えることは、正直に言う
結婚や出産など、やむをえない事情の際には、率直に理由を伝えても問題ありません。
その際には、
「きちんと家事をするため、勤務時間が短い職場に転職したい」
「育児と仕事を両立しやすいよう、自宅から近い職場を希望している」
など、状況を具体的に伝えると、納得してもらいやすいでしょう。
また、勤務時間や給与面などの条件面が転職理由の場合は、それを伝えることで、条件の改善などを考えてもらえるかもしれません。
ただ、条件面だけが転職の理由であることは、意外と少ないのではないでしょうか。
もし、条件面が改善したとしても退職の意思が変わらないのであれば、条件面には触れずにその他の理由を伝えた方が、スムーズに退職の話が進むでしょう。
ポイント(3)感謝の言葉を添える
今の職場に何らかの不満はあったとしても、一定期間お世話になったことは確かですし、働く中で学べたことも必ずあるはずです。
退職の意向を伝える際には、そうした「学べたこと」や「感謝の気持ち」を添えると、お互いに気持ち良くお別れができると思います。
〈例1〉
新卒で何もわからなかった私も、当院で仕事の基本を身につけることができました。本当にありがとうございました。
〈例2〉
たくさんの症例に触れられたことは、歯科衛生士として大きな経験になりました。院長をはじめ、職場の皆さんに感謝しています。
ケース別例文・面接での「退職・転職理由」はこう伝えよう
当たり前のことですが、転職の際には、現在の職場を退職するだけでなく、次の職場に「採用される」必要があります。
「自分にとって、より良い職場で働きたい」という希望を叶えるための転職ですから、「入職したいと思う職場」と出会えたら、ぜひ採用までこぎ着けたいものです。
そこで、退職・転職理由をどのように伝えれば採用されやすいのか、例文とともに紹介していきましょう。
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【解説付き】歯科衛生士の面接ノウハウ!よく聞かれる質問・回答例文
採用したいのは「仕事に前向きに取り組む人」「仕事を続けられる人」
具体的な文言を考える前に、まずは、歯科医院の採用担当者の立場に立って考えてみましょう。
ほとんどの場合、歯科医院が採用したいのは、「仕事を主体的に頑張ってくれる歯科衛生士」。
そして、「一定期間(できればずっと)、勤務を続けてくれる歯科衛生士」です。
逆に言えば、「周りへの不満ばかりで、常に受け身の姿勢の歯科衛生士」「すぐに辞めてしまいそうな歯科衛生士」は採用されにくいと言えます。
それを踏まえて、転職理由の主な4つのカテゴリーごとに、実際の「伝え方」のポイントを見ていきましょう。
<ケース1>ライフステージの変化に合わせた転職の場合
結婚・出産が理由の転職の場合、「転職理由」自体は率直に伝えて構いません。
「現在の職場への退職理由の伝え方」の項目でも述べたように、「きちんと家事をするため、勤務時間が短い職場に転職したい」など、状況を具体的に伝えると、納得してもらいやすいでしょう。
この理由の場合で注意したいのが、「今後も長く働き続けるつもりがある」「家庭や育児と同時に、仕事もしっかり頑張りたい」ということを、きちんとアピールすることです。
〈例1〉
もともと私が歯科衛生士になった理由は、育児と仕事を両立して、生涯働きたいという希望があったからです。勤務条件の整った貴院でなら、その思いを叶えられると考えました。
〈例2〉
これまでよりも仕事に割ける時間は減りますが、その分、勤務時間には収集して仕事に取り組み、歯科衛生士としてのスキルアップにも努めます。
<ケース2>人間関係の改善を目指した転職の場合
このケースの場合は、伝え方に注意が必要です。
「人間関係」に対する評価はどうしても主観的になりがちですし、本当に前職の院長やスタッフに問題があった場合でも、転職先の採用担当者にはそれは分かりません。
そのため、「この応募者は、周囲の環境に不満を持つタイプの人なんだな」と、マイナスの印象を持たれてしまう可能性が高いからです。
ポイント
- 個人の攻撃にはならないようにする
- 第三者が聞いても納得できるような客観的な理由を添える
- 前向きな内容に言い換える
〈例1〉
先輩が指導してくれなくて退職
新人指導の担当者が決まっていなかったうえに、患者数が多くかなり忙しい環境だったため質問をしてもなかなか教えていただくことができませんでした。
〈例2〉
院長の方針と合わずに退職
診療での患者さんとのやり取りを通して予防歯科の方法や販売するケアグッズを改善したいと考え、ミーティング時に提案するなどしてみたのですが院長に取り合ってもらえませんでした。
<ケース3>仕事内容の変化やスキルアップを目指した転職の場合
このケースで注意したいことも、人間関係と同様に「前職に対する不満を言わない」ことです。
「前職でどうだったのか」よりも、「次の職場ではこのような仕事をしたい」「このようなことを学びたい」という内容に重点を置いて、ポジティブに伝えましょう。
前置きとして前職の仕事内容に触れる場合も多いと思いますが、その際には、「経験したこと」や「学んだこと」を簡潔に述べるようにしてください。
「〇〇という経験の中で、××という課題を見つけ、その課題を解決するために転職を希望している」という建設的な文脈であれば、プラスに受け止めてもらえるはずです。
〈例1〉
前職では幅広い年齢の患者様と接していましたが、中でも高齢の患者様への対応に大きなやりがいを感じていました。そこで、高齢者歯科をより専門的に学びたいと考え、訪問診療に力を入れている貴院への転職を希望しています。
〈例2〉
前職では実践を中心に患者様との関わり方を学んできましたが、歯科衛生士としての基礎的なスキルを固める必要性も感じていました。貴院は教育体制が非常に充実していると知り、初心に返って学びたいと思い応募しました。
<ケース4>勤務条件の改善を目指した転職の場合
伝え方に一番悩むのが、このケースかもしれません。
「挑戦してみたい仕事内容」など、勤務条件のほかに伝えられる理由があるのであれば、そちらを伝えた方が無難でしょう。
どうしても条件面に言及する必要がある場合は、「楽に働きたいから転職する」のではなく、「より仕事に前向きに取り組みたいから転職する」という姿勢をきちんと伝えることが重要です。
前職のことに触れる場合は、感情的に不満を述べるのではなく、事実のみを簡潔に伝えましょう。
〈例1〉
前職は残業が多く、体力的に余裕がありませんでした。メリハリをつけて働くことで、もっと仕事に集中できると考えて、終業時間の早い貴院への転職を希望しています。終業後の時間にゆとりができる分、歯科の勉強や語学の勉強にも取り組みたいと考えています。
〈例2〉
私は歯科衛生士としての専門性を磨いて、ゆくゆくは認定資格の取得にもチャレンジしたいと考えています。そのため、実力をしっかり評価してもらえる貴院の給与体系に魅力を感じました。
まとめ 大事なのは、仕事への「前向きさ」
今回は、歯科衛生士の転職のさまざまな理由と、その“伝え方”を紹介しました。
どのケースにおいても大事なのは、「仕事に対する前向きな気持ち」をしっかりアピールすることです。
「この歯科衛生士と一緒に働きたい」「この人を採用したら、うちの医院がより良くなりそう」と思ってもらえるかどうかを意識して面接などに臨んでほしいと思います。
そして、退職する職場の院長やスタッフにとっても、「この人と働けて良かった」と思ってもらえるような過ごし方や伝え方をするよう心がけましょう。