【歯科衛生士のホンネ】自分でも気づかない「長所」の見極め方とは? 見つけるためのカギは「誰と働くか」

歯科衛生士を目指す中、慣れない専門用語が飛び交う授業や実習で、「自分は向いていないかもしれない」と不安を抱えている方も多いはず。

歯科衛生士6年目のたなさん(仮名)も、かつては皆さんと同じように悩んだ一人。
「もともと人より不器用で、作業ペースも遅かった」と話す彼女に、不安と壁を乗り越えたきっかけを詳しく伺いました。

<たなさんプロフィール>
歯科衛生士6年目。基本は平日9時〜20時半勤務で、土日は同じ法人内の別医院で働いている。

苦手なことに向き合うときは、得意分野でカバー

——たなさんが歯科衛生士を目指したきっかけを教えてください。
高校生の時に「子育てと両立できる仕事に就きたい」と思い、職業辞典で歯科衛生士の仕事を見つけました。給料や働く時間の面で都合がよく、仕事内容に「診療を通して患者さんとしっかり向き合える」と書かれていて、「素敵な職業だな!」と思ったんです。

——歯科衛生士学校時代、たなさんはどんな学生でしたか?
私は実技がとても苦手で、実習でも最後まで作業が終わらないことも多く、「歯科衛生士には向いていないかも」と思っていました。他にも、臨床実習は歯科衛生士さんの指導が厳しくて辛かったです。

——「向いていない」と感じる中で、どのようにして乗り越えたのでしょう?
臨床実習は「学生時代にやるべきことだから」と、自分に言い聞かせました。患者さんの言葉に救われながら乗り越えて。学校では「技術で勝てなくても、知識では負けないようにしよう!」と思い、とにかく勉強を頑張りましたね。その結果、テストの成績はクラス42人中4位以内をキープできたんです。

——苦手なこともあったけど、他の分野でカバーしたんですね!

患者さんとのコミュニケーションを取る時は、「身近な人の視点でアドバイスする」

——たなさんが最初に就職した医院は、どのような環境でしたか?
ユニット数は13台で、3院展開の医療法人です。医院見学に行った際、スタッフの笑顔や声かけが気持ちよく、面接も楽しい雰囲気だったので就職を決めました。

でも、実際に働き出してみると、なかなか仕事に前向きになれなくて……1年目の冬に辞めようと悩んでいたんです。先生に相談すると、「こんなに患者さんにしっかりと向き合う歯科衛生士はいない。やめるのはもったいない」と言ってくれて、踏みとどまることができました。

その後、しばらくして別の理由で転職したのですが、あの時にすぐに辞めなかったことで、入職当初から担当していた重度の歯周病患者さんにじっくり向き合えました。長い時間をかけて患者さんの行動や意識を変えることができ、出血が止まるまでの治療もできました。

もし最後まで見届けていなかったら「指導を間違えていたかも……」と心残りになっていたと思うので、経過を追うことができてよかったです。

——歯科衛生士としての手応えを感じられる経験になったんですね。たなさんが患者さんとのコミュニケーションで大切にしていることは?
医院の先輩が「患者さんの口腔内だけで判断するのではなく、生活背景も見て向き合うべき」という考えの人で、大きな影響を受けました。

それをきっかけに、出会った患者さんから「会話のネタをひとつ聞き出すこと」を目標にして、「友達だったらこう言うかな……」って、身近な人の視点でアドバイスしています。実際に、患者さんとは友達感覚で話してしまうことも多いんですよ(笑)。

——ちなみに、コミュニケーション術はどのようにして鍛えたのでしょうか。
隣の診察室から聞こえた良い言い回しを取り入れたり、患者さんとの会話で「これは響いたんだな」って分かると、それを繰り返し使ったりしています。

私は先輩と比べて「自分は歯科衛生士として劣っている」と思っていたのですが、患者さんと積極的に話すようになると、自信を持って楽しく仕事に取り組めるようになりました。

——雑談で信頼関係ができると、「またこの医院に通いたい!」って思いますよね。
そうなんです。クリーニングなどの予防処置では、通うのを中断してしまう患者さんもいらっしゃいます。けど、患者さんの将来の健康を考えると見逃せないんですよ。キャンセル対策のためにも、まずは「話を聞くこと」を大切にしています。

自分の強みを見つけるには「誰と働くか」も重要

——たなさんのように、患者さんとのコミュニケーションが得意、大切にしたいと思う人は、医院見学の際に、どこを見極めたらいいと思いますか?
歯科衛生士さんの診療の様子ですね。「どんな業務をやっているのか」よりも「どんな風に患者さんとコミュニケーションを取っているのか」を見るのがいいと思います。

歯科衛生士さんに質問する時も「こんなこと聞いて大丈夫かな?」って思うかもしれませんが、今後に活かせる話かもしれないので、引き出しを増やすためにも、どんどん質問した方がいいですね。

——新人の頃は「自分の強み」が分からなくて、落ち込んでしまう人も多いと思います。自信を持てない若手の歯科衛生士さんに伝えたいメッセージはありますか?
自分の強みは人との出会いで見つけられる可能性があります。なので、職場探しでは条件と同じくらい「誰と働くか」が重要だと思います。

私も1年目の冬に辞めようと思ったとき、相談した先生が長所を引き出してくれたお陰で自分の強みに気づくことができました。あの時、あの医院にいなかったら、今のようなコミュニケーション能力も培われなかったと思います。

それに私は、学校の授業でフロスの存在を知ったくらい、デンタルIQが低かったんですよ(笑)。だけど、その経験があるから患者さんに優しくなれて、「実は昔、歯の意識が低かったんですよね」って話すことがあります。学生時代の経験は、後から必ず活きてくるので自信を持って頑張ってください。

 

取材・編集 小沢あや(ピース株式会社
構成 吉野舞
イラスト あわい
デザイン ありよしはるか

 

 

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