
どうやって目指す? 意外と知らない「研究者」への道のり
続・勝村聖子の歯科法医学日誌 #2 会員限定皆さんこんにちは。あっという間に2025年も1ヶ月が過ぎました。
そして2月、歯科医師国家試験の時期ですね。受験した皆さん、お疲れさまでした。20年以上経ったいまでも「あっ!勉強しないで寝ちゃった、どうしよう!」と思っている試験当日の朝の夢で目が覚めます。ものすごい緊張感だったことと思います。結果が出るまでドキドキですが、あなたができない問題はみんなもできない。難しいも問題はみんなも難しい。歯学部生活の集大成、これまでの勉強の成果を存分に発揮できていますように(祈✨)。
この時期に毎年感心するのが、学生さんの免疫力です。疲労や睡眠不足もあるだろうに、なぜか感染症に強い! まさに「病は気から」ですよね。試験が終わったり進級が決まったりすると、途端に熱が出たりインフルエンザに罹患してしまう、なんてこともあるので、体調管理には十分気をつけましょう。
さて今回は、「研究者とは?」という質問にお答えしたいと思います。
① どうやってなる?
『研究者』という道を考える場合には、大学院を修了して学位(博士号)を取得することをお勧めします。必須ではありませんが、大学院生は簡単にいうと、研究者の卵です。その課程を修了し、学位を取ることで「研究者」として誕生できると考えてください。研究者としての採用資格は「博士の学位を有すること(が望ましい)」となっていることも多いです。
② 就職先は?
歯科医師の学位取得者で一番多いのは、大学の教員かな。「研究者=大学に残っている」という印象が強いのではないでしょうか。そしてそこには、いずれも「ポスト」と呼ばれる教員の籍が空いているかという問題があります。私の場合は、東京医科歯科大学大学院に入る段階で、「大学院を出てもポストはないと思う」と言われました。素直に法医学を学びたい、そして歯科医師が医学部で教員ポストに就くのは難しいだろうと思っていたので、進路については別途考えることにして進学しました。
大学院修了後、鶴見大学でポストドクター(博士号を取得したあとの任期付きの研究者)の籍があるとお声がけいただき、母校に戻りました。晴れて鶴見大学歯学部法医歯学の籍につき「歯科法医学者です!」と言えるようになったのは、大学院修了5年目でした。残念ながら大学の籍については一部、「運」のようなものもあるのが現状です。でも法医学に関していうと、法律で人材育成や教育の充実が明記されるようになり、歯学部での法医学関連講座の新設や人員増員を図っている大学もありますから、そういう意味では『狙い目👀!』です。
③ 「研究者」と「専門医」「認定医」の違いとは?
研究者はその分野の研究におけるスペシャリストですが、専門医や認定医は臨床面でのスペシャリストです。そのため将来的に臨床に進みたいと思う場合は、研究者よりも専門医や認定医の資格取得を目指して診療科や講座で専門性を学ぶ方がいいかもしれません。「研究者」か「臨床医」か。自分が目指す人生設計に合わせて進路を考えると良いでしょう。
④ 研究以外に誰と関わり、何をする?
法医学の分野も他職種連携が大切です。私がよく関わるのは鑑定の依頼を受ける警察や海上保安庁の方々ですが、他大学の医師の先生との交流も欠かせません。また大規模災害に向けての訓練や協議会といった場では、行政官や葬祭業者の方とも関わります。日頃から「顔の見える関係」を築くことで、実際の災害が起きたときにより円滑な連携が実現できるのです。

そういったご縁の中、最近は警察での講演の機会などもいただいています。「警察官」といっても全員が死体を扱うわけではなく、歯科法医学を知らない方も多いので、我々の知識や業務内容を知ってもらう貴重な時間です。
また男性社会のイメージも強い警察組織の中で頑張っている女性たちと、キャリアアップについて考える会を設けていただいたりしています。仕事や上司の愚痴になると、盛り上がりは半端ない!! 違う分野の人と過ごす時間は発見や勉強の宝庫で、ほんとに楽しい時間です。

歯科業界はちょっと狭い世界。みなさんもたまには、小中高の友人や、違う進路に進んでいる方と知り合うなど、歯科界・歯学部以外の広い世界観や価値観を楽しんでみてはいかがでしょうか。

鶴見大学 准教授
勝村聖子
歯学部を卒業後、東京医科歯科大学大学院を修了し博士号(医学)を取得。細菌学、解剖学に籍を置いたのち、鶴見大学にて歯科法医学の研究に携わる。2011年に東日本大震災で身元確認を行ったことをきっかけに、フジテレビ『監察医 朝顔』の法歯学監修も担当。仕事のお供にドライフルーツやナッツを食べるのが好き。
歯学部を卒業後、東京医科歯科大学大学院を修了し博士号(医学)を取得。細菌学、解剖学に籍を置いたのち、鶴見大学にて歯科法医学の研究に携わる。2011年に東日本大震災で身元確認を行ったことをきっかけに、フジテレビ『監察医 朝顔』の法歯学監修も担当。仕事のお供にドライフルーツやナッツを食べるのが好き。
続・勝村聖子の歯科法医学日誌の記事一覧
- #1 「歯科法医学者」に資格はない? 私がこの道を選んだ理由
- #2 どうやって目指す? 意外と知らない「研究者」への道のり
- #3 普段は何をしているの? 「歯科法医学者」の仕事内容