診療分野を知ろう!〈口腔外科(インプラント以外)編〉|歯科衛生士知っとこ!職場の見極め塾#32

こんにちは!ライターのヤナギです。 これまでに10年以上、クオキャリアでたくさんの歯科医院を訪問したり、記事を執筆したりしてきました。
その経験から、歯科衛生士の皆さんに「自分に合った職場を選ぶためのヒント」をご紹介します。

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「口腔外科」は歯科診療の重要な分野

この連載のLesson 6で、歯科医院の「診療科目」や「診療分野」について解説をしました。

今回取り上げるのは、「口腔外科」です。

上記の記事の中でも解説していますが、歯科の「診療科目」として標榜できる(看板に書ける)のは、「歯科」「小児歯科」「歯科矯正科」「歯科口腔外科」の4つだけ。
つまり、「口腔外科」はそのくらい独立性の高い、重要な分野なのです。

でも、「口腔外科」にはいったいどんな治療が含まれるのか、具体的なイメージがあまり湧かない人もいるのではないでしょうか。
また、口腔外科は「歯科医師が行う治療」という印象が強く、歯科衛生士がどのように関わるのかが見えにくいかもしれません。

そこで今回は、「口腔外科」にスポットライトを当てて、詳しく解説していきます。

「口腔外科」では、どんな病気を治療する?

まずは、口腔外科で扱う主な疾患をズラッと並べてみます。

  • 抜歯(特に親知らずや、有病者の抜歯などの難しいケース)
  • インプラント
  • 歯周外科治療(フラップオペ)
  • 交通事故やスポーツなどによる口腔内や顎顔面の外傷
  • 口内炎など口腔粘膜疾患
  • 唾液腺疾患(嚢胞、炎症、結石など)
  • 良性腫瘍、悪性腫瘍(口腔がん)
  • 顎関節症、顎関節脱臼
  • 顎変形症
  • 口唇口蓋裂

虫歯や歯周病などの感染性疾患に伴う処置から、いわゆる「ケガ」に該当するもの、さらに赤ちゃんのうちに治療する先天性疾患まで非常に幅広いことが、このリストからもわかると思います。

なお、これらの中で「インプラント」については、一般的なクリニックでも手がけていることが多く、歯科衛生士が特に活躍している診療分野でもあるので、別の記事にまとめてあります。
診療分野を知ろう!〈口腔外科(インプラント)編〉|歯科衛生士知っとこ!職場の見極め塾#31

今回のコラムでは、インプラント以外の口腔外科について見ていきましょう。

口腔外科の特徴って?

口腔外科は、一般歯科とどのような違いがあるのでしょうか。
主に次の2点が挙げられると思います。

1.手術をはじめとした外科的処置を伴う

口腔外科の治療は、その分野名の通り、組織や骨の切開、切除、縫合、移植などの「外科的処置」を伴うことが多いです。
通常の診療室よりもさらに衛生管理を徹底したオペ室など、外科処置のための専用設備が必要になります。

また、局所麻酔はもちろん、静脈内鎮静法を使うケースがよく見られ、場合によっては全身麻酔下で手術が行われることもあります。
そのため、医療機関によっては「歯科麻酔科」を併設し、麻酔専門のスタッフが手術に参加することもあります。

2.全身の健康や生命に直接関わる分野である

口腔外科で扱う疾患では、手術や処置の際はもちろん、場合によってはそれ以外のときでも、全身管理がとても重要になります。
そのため、一般歯科以上に、医科分野との連携が必要とされます。
また、悪性腫瘍など、生命を直接左右する疾患を扱うことも、口腔歯科の大きな特徴です。

口腔外科の症例はどこで診られる?

口腔外科にはこのような特徴があるため、一般的な歯科クリニックで行える口腔外科治療は限定的です。
クリニックで日常的に行う口腔外科治療は、抜歯、インプラント、歯周外科、軽度の外傷や疾患の処置、といったところでしょう。
抜歯も、横向きに生えている親知らずなど難しい症例の場合は、口腔外科のある病院を紹介することもあります。

口腔外科領域の治療を全般的に扱っているのは、大学病院や総合病院の「口腔外科」です。また、クリニックの中にも、口腔外科を専門的に行っているところがあります。
口腔外科に本格的に関わりたいという人は、こうした専門機関への入職を検討するのが良いでしょう。

口腔外科での歯科衛生士の役割

口腔外科全体に共通する歯科衛生士の役割は、主に3つです。

1.術前・術後の口腔管理

あらかじめ歯周病治療や口腔内の清掃などを行い、処置や手術が安全に行える口腔環境を整えます。
また、処置や手術の後の定期的なメンテナンスも担います。

2.処置・手術中の診療補助

器具の準備や受け渡しなどを行い、処置や手術がスムーズに進むようにサポートします。

3.患者さんの心理面でのサポート

この役割が、口腔外科ではより一層重要です。
口腔外科では患者さんの多くが、抜歯や手術を控えて不安を抱えていたり、予期せぬ疾患やけがに落ち込んでいたりします。
その気持ちに寄り添って声をかけたり、患者さんが疑問を持っているのであればドクターとの橋渡しをしてそれを解消したりと、歯科衛生士が患者さんのためにできることが非常に多いのです。

歯周外科治療での歯科衛生士の役割

上記の1〜3のような口腔外科全体に共通する役割に加えて、歯科衛生士が特に力を発揮できる口腔外科治療があります。
それが、「歯周外科治療」です。

「歯周外科治療」とは、その名称の通り、歯周病に対する外科的なアプローチのことです。
通常のSRPや歯周内科治療ではなかなか結果が出ない重度の歯周病に対して、歯茎を切開して縁下歯石を直接見ながら除去し、再び歯茎を縫合する、というのが治療の大まかな流れです(フラップオペとも呼びます)。
一般歯科の範囲ではどうしても治せなかった歯周病を治す、「最後の手段」とも言えます。

歯周外科は歯周病治療の一環ですから、通常の歯周病治療の延長線上にあるものです。
オペ自体は歯科医師が執刀しますが、歯周病に対する総合的なアプローチを担うのは、やはり歯科衛生士。
外科的な処置と並行して、精度の高いメンテナンス、そして保健指導が欠かせません。

「思い切って外科治療をして、しっかり治そう」
「せっかくきれいになったのだから、この状態を頑張って維持しよう」
このような患者さんのモチベーションを引き出すことが、歯周外科治療を成功させられるかどうかの要になります。

口腔外科のやりがいは?

口腔外科の中でも、口唇口蓋裂をはじめとした先天性疾患の治療や、悪性疾患の治療などのケースでは、患者さんの人生に深く関わることになります。

以前に取材した、大学病院に勤務している歯科衛生士さんは、病院の口腔外科を「患者さんにとっての最後の砦」と表現していました。
「なんとか助けてほしい」という切実な思いに応えられたり、「この治療を受けたから生きられた」と人生に希望を与えられたり。
患者さんとの関わりの中で大きな感動を味わえることが、口腔外科の醍醐味でしょう。

もちろんこれ以外にも、「手術自体の面白さ」や「スキルアップ」などのやりがいが挙げられます。
それについてはインプラント編で取り上げていますので、ぜひチェックしてみてください。

まとめ:口腔外科の知識は、普段の診療現場でも大切!

口腔外科は、一般歯科とはあまり接点がない「特殊な分野」と思われがちです。
実際に、病院でしか行われない治療も多くあります。
でも実は、病院の口腔外科を受診する患者さんの多くが、地域のクリニックからの紹介なのです。

以前に取材した歯科衛生士さんの中には、「定期検診の際に口腔内のできものが気になったので口腔外科を受診してもらったら、口腔がんだった。早期発見できたため命に別状はなかった」という経験をした人もいました。

患者さんの口腔内の異変にいち早く気付けるのは、“かかりつけ”となっている地域のクリニックです。
患者さんの命や生活を守るためには、口腔外科の知識も幅広く身につけておくのが大事だということを、ぜひ忘れないでいてほしいと思います。

そしてもちろん、口腔外科を本格的に学び、専門を究めていくのもよいでしょう。そんな希望のある方は、病院の口腔外科や、口腔外科を専門的に行っているクリニックを、就職先として検討してみてください。

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ヤナギ

ライター、インタビュアー

2010年よりクオキャリアのさまざまな媒体で歯科医師・歯科衛生士の取材や、求人原稿・インタビュー記事の執筆など、のべ6,000件以上を担当。歯科業界の採用事情に精通している。

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