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日本人は柔らかい毛で高密度が好き⁉ 歯ブラシの最新トレンド【後編】 連載コラム

日本人は柔らかい毛で高密度が好き⁉ 歯ブラシの最新トレンド【後編】

みんなでハマろう! オーラルケアグッズ沼 #2

歯学部生なら興味がある、歯ブラシや歯磨き粉、フロス、歯間ブラシなどのオーラルケアグッズ。

でも、種類やトレンドについてそんなに詳しく知らないのではないでしょうか。

本連載では、オーラルケアグッズ専門店「メガデント銀座店」の店長であり、オーラルケアグッズの魅力を知り尽くしている酒向淳さんに、オーラルケアグッズ沼へといざなっていただきます。

最近の歯ブラシトレンド

日本における歯ブラシの最新トレンドは、「高密度植毛」、「斜め植毛」、「抗菌毛」、「フッ素含有毛」、「シリコン毛」である。では、ひとつひとつ紐解いていこう。

植毛方法の進化から誕生した「高密度植毛」

はじめに「高密度植毛」について。

まず「高密度植毛」が生まれた背景を説明しよう。

従来、歯ブラシの毛は、毛を半分に織り込んで、平線という金属製のホッチキスで柄のヘッド部分に植え付ける「平線植毛」が一般的だった。しかしヘッド部分に一定の高さが必要で、植毛方向にも制限が出てしまう。

そこで新たに、毛をヘッド部分に癒着して固定する「融着植毛」が考案された。つまりホッチキスを使用せず、無平線で植毛できるのだ。だが、当初は技術的な問題から一部の毛が抜け落ちることがあり、植毛数には制限があった。

しかしその後、熱処理技術の向上などによって植毛数が向上し、ついには「高密度植毛」が生まれた。
さらに毛の材料である人工繊維がより細く強くなり、切れにくくなることも重なって、「超高密度植毛」も誕生。歯ブラシ1本あたりの植毛数は800本~1000本だったが、5千本、1万本、ついには2万本もの植毛数の商品も出てきた。

世の中も、噛み応えのあるガムから、より柔らかく噛む回数が少ないグミが好まれるようになってきているように、歯ブラシの毛も柔らかい毛を好む人が増えてきた。さらに、より密度が高く、より長さが短い歯ブラシが好まれるようになってきている。

4本とも「高密度植毛」。 左から6000本、8000本、12000本、20000本
4本とも「高密度植毛」。 左から6000本、8000本、12000本、20000本
右が「高密度縮毛」。普通のものと並べてみると明らかに毛の密度が異なる
右が「高密度縮毛」。普通のものと並べてみると明らかに毛の密度が異なる

賛否が分かれる⁉ 「斜め植毛」

次に「斜め植毛」

以前から「段差植毛」はたくさん売られているが、これは特許の関係上、国内では毛先が細い毛を同じ高さで植毛できるのは一社のみだった。そこで他社は、毛先が細い毛とそうでない毛を、段差をつけて植毛することによって、特許の問題をクリアした。

ただ、「平線植毛」だったため、植毛方向は台座に対して、直角にしかならず、段差の長短こそそれぞれ違いはあるものの、各社似たり寄ったりの商品が多かった。意外と知られていないが、海外製を輸入することも規制されていた。

そこにEUで一大勢力になったのが、「融着植毛」を応用して、台座に対して斜めに、しかもナイロン毛ではなくシリコンゴムが設置されている「混合植毛」。一見すると、子ども用の玩具のようにも見える商品だ。

この商品が国内でも徐々に増えてきている。ただ、清掃効率うんぬんで、大人用は意見が賛否に分かれそうだ。しかし乳歯と永久歯が混在している混合歯列期は、凸凹が大きく、ガチャ磨きをする子どもには向いているかもしれないと筆者は考えている。

「斜め植毛」。ブラシの両側にソフトラバーのブラシが付いており、歯茎のマッサージができる
「斜め植毛」。ブラシの両側にソフトラバーのブラシが付いており、歯茎のマッサージができる
15度の傾斜をつけて2方向に植毛している
15度の傾斜をつけて2方向に植毛している

毛に薬剤が吹きかけられた「抗菌毛」と「フッ素含有毛」

次に「抗菌毛」と「フッ素含有毛」

昭和期は歯ブラシの毛は「物理的=形」で進化してきた歴史がある。ちくちくしない先丸加工に始まり、歯周ポケットに入りやすい先細になっているテーパード毛、「エッジ=角」が立つようにねじってあるツイスト毛、その他、毛先が球や正方形の毛などである。そこに法律の緩和や技術革新によって、化学的な薬剤を吹きかけるか、練り込むかの違いはあるものの、物理的な清掃以外の機能が毛に付加されている商品が登場してきている。

先輩格として、すでに広く販売されている、黒い毛の歯ブラシを見たことがあるのではないだろうか。水だけで磨けるという目的のためにプラチナが練り込んであるのだが、実験では、歯磨剤を使用しなくても確かに汚れが落ちていたが、今でも効果の源がわからないという。「おそらく遠赤外線効果で汚れが落ちやすいのでは?」と研究者から聞いたことがある。

ちなみに毛の材料とプラチナの結合を良くするために、黒い染料が使われている。そう、あの黒い毛は見た目のためではなく、本当に機能性を高めるために必要な処置なのである。

同様に銀が毛に練り込んであり、歯ブラシ自体の抗菌をうたうもの、フッ素を毛に吹きかけたり練り込んだりして、使用時に毛からフッ素が放出され、口の中に効果を発揮すると主張する商品まで登場している。

左側のサンスターはハンドルが「銅」による抗菌で、毛がクロルヘキシジンによる抗菌。右側のユーカンパニーはハンドル抗菌なしで「抗菌加工ヘッド」のみ
左側のサンスターはハンドルが「銅」による抗菌で、毛がクロルヘキシジンによる抗菌。右側のユーカンパニーはハンドル抗菌なしで「抗菌加工ヘッド」のみ
「フッ素含有毛」
「フッ素含有毛」
黄色の毛のみが「フッ素配合毛」。黒い毛はプラチナ含有毛
黄色の毛のみが「フッ素配合毛」。黒い毛はプラチナ含有毛

歯ブラシ界のマイナー商品「シリコン毛」

最後に「シリコン毛」

ナイロン毛に一部シリコン毛が植毛されているだけでなく、2023年になってシリコンゴムだけの歯ブラシも発売されている。むろん従来からマイナー商品として存在はしていたし、乳児用の指サック型は広く流通しているが、大人用で、大手ナショナルブランドで全国発売されるのは初めてで、この先どうなるか楽しみである。

「シリコン毛」
「シリコン毛」
左が発売されたばかりのライオンクリニカPRO。右が三宝製薬ガムテック歯科用
左が発売されたばかりのライオンクリニカPRO。右が三宝製薬ガムテック歯科用

口内で細菌を育てる未来がくるかも…?

とりとめもなく、歯ブラシに関する内容を書いてきた。今回は歯ブラシ本体の話だけだが、実際には効果的に磨く回数や、磨くタイミングは時代とともに変化していて、清掃の全自動化もトライされている。

まだ完璧に汚れを落とす方法は見つかっていないし、まして病気にならない最適解は現存しない。
EUでは2000年代になって、毛で擦って汚れを落とすという物理的アプローチや歯磨剤で細菌を死滅させる化学的アプローチ以外に、生物学的=バクテリアアプローチに注目が集まっていると感じる。
要は善玉菌や悪玉菌に代表されるような、口内フローラを改善するために、単純に汚れ=細菌を減らすのではなく、増やしたり育てたりする概念も重要だという考え方に変わってきている。

筆者は全身への影響はともかく、せめて汚れによって口の中の病気にはならない世界になれば良いとは思っているが、まだまだ道は長いようである。

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