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思い通りの道を歩めなかったら、どうすればいいですか?――角 祥太郎先生 後編 キャリア

思い通りの道を歩めなかったら、どうすればいいですか?――角 祥太郎先生 後編

大学の先生とは違う視点の助言が新鮮! 人気ドクターの進路相談室 #2

将来の目標が決まっている人、まだ考えられない人。好きなことが見つかっている人、何が得意かわからない人。それぞれ状況は違っても、「進路にまったく悩んでいない」という歯学部生はいないのではないでしょうか。

そんな歯学部生のために、各分野で大人気のドクターによる進路相談室を開設! どうすれば理想の歯科医師人生を送れるのか、学生時代に何をしておくべきか……歯学部生のあらゆるギモンに、まっすぐ答えてもらいました。

第1回のアドバイザーは、経営セミナーが常に満席になる角 祥太郎先生。後編では、先生が歯科医師になるまでのエピソードや、これからの歯科業界について伺いました。

今回相談に乗ってくれたのは…

角 祥太郎先生

角 祥太郎先生

2005 年、東京歯科大学卒業。2009 年、同大学大学院解剖学講座にて博士課程修了(歯学博士)。医療法人海星会勤務、同法人副理事長・株式会社DENRICHE 代表取締役を経て、2017 年、株式会社clapping hands 代表取締役。診療の傍ら、200名のスタッフマネジメント経験を活かして、人財育成に関して年142回の院内セミナーにより全国の歯科医院のチームビルディングを行う。書籍「最強の歯科ミーティングバイブル」「最強の歯科ミーティングバイブル2」(デンタルダイヤモンド社)

2005 年、東京歯科大学卒業。2009 年、同大学大学院解剖学講座にて博士課程修了(歯学博士)。医療法人海星会勤務、同法人副理事長・株式会社DENRICHE 代表取締役を経て、2017 年、株式会社clapping hands 代表取締役。診療の傍ら、200名のスタッフマネジメント経験を活かして、人財育成に関して年142回の院内セミナーにより全国の歯科医院のチームビルディングを行う。書籍「最強の歯科ミーティングバイブル」「最強の歯科ミーティングバイブル2」(デンタルダイヤモンド社)

大阪歯科大学5年生・富沢武士さんの相談

僕は歯学部入学前に、さまざまな社会経験をしてきました。卒業後は臨床以外の分野で、これまでの人生で培ったことを発揮したいと思っています。それを実現するために必要なこと・やるべきことは何でしょうか?

前編では、ご自身の仕事内容をふまえて、キャリアを築く上で大切にすべきことを教えてくれた角先生。そんな先生は、学生時代をどのように過ごしてきたのでしょうか?

気になることに挑戦し続けた学生時代

角先生が歯科医師になるまで

大学入学前 石川県輪島市で、歯科医院の3代目として生まれる。親戚や交友関係にアート畑の人が多かったため、自然と「才能で稼ぐ」ことに憧れるように。高校時代まで歯科業界に興味はなかったが、とある画家から「歯学部に行かせてもらえるんだから、まずは資格を取りなさい。才能うんぬんはそのあとでもいいじゃないか」と諭され、歯学部を志す。
大学時代 1浪した後、特待生で歯学部に入学。バンドをしたかったが楽器が弾けなかったため、軽音楽部の部員を誘ってカラオケに行き、ボーカルの座を獲得。その後ギターを買って作詞作曲を始め、有名バンドの前座を務めるように。同時期にプロレスを始め、学園祭で試合を企画。学生はもちろん、大学病院に入院している患者さんにまで人気が出る。現在も「キム・ヨッチャン」の名でプロレス活動を継続中。
大学卒業後 「絶対に受かる」という自信があったものの、国家試験が不合格に。ショックを受けるが、「これは偉人に起こるエピソードだ」と自分に言い聞かせ、気持ちを立て直す。国試浪人中は勉強の傍ら、イベント会社で週5日アルバイト。2度目の試験で合格し、大学院の解剖学講座へ進学する。歯科業界から初めて動物学会に論文を出し、異例の3年で大学院を卒業。
ピンクの衣装がキム・ヨッチャンのトレードマーク。
ピンクの衣装がキム・ヨッチャンのトレードマーク。

富沢:臨床やセミナーなど歯科業界で活躍し、さらにはお笑いにプロレスといろんなことに取り組まれている先生が学生時代をどう過ごしていたのか、大変興味があります。

:いや、ぐうたらしてましたよ(笑)。思春期をこじらせていたんでしょうね、ひたすら小説を読みあさり、ろくに楽器も引けないのにバンドを組んで。

富沢:おお、バンド活動を!

:人気バンドの前座でお客さんを集めようと画策したり、ベースのメンバーはただ太ってるやつを誘って、「弾かなくていいから、ずっとタバコ吸ってろ」って言ったり。ちょっと変わったことをして楽しんでいました。

富沢:(笑)。

:医療って、「問題解決のためにできることを増やしていく」のが基本ですよね。でも、それだけだと僕は息が詰まってしまう。だからやりたいことで目立つことと、自分を押し殺してスキルを積み重ねることの両極端を行ったり来たりすることで、メンタルのバランスを取っていました。

富沢:その「両極端」が、先生の魅力の一つだと思います。バンドの他には何かされていましたか?

:学生プロレスですね。学園祭でやったら好評で、どんどん楽しくなってきて。プロレスネタで有名な芸人さんを呼んだり、ツテをたどって議員会館まで行って、大仁田厚さんの出演を取り付けたりして。ゼロから物事を立ち上げる、これまでになかった仕事をつくろうとしていました。

富沢:先生の今のお仕事にも通じている気がします。

:通じてますね。やりたいことに蓋ができないタチなので、とりあえず気になることを手当たり次第やってみて、ウケたらしつこく深掘りしていく。つまるところ、僕の人生はその繰り返しなんです。

もし転んでも、そこでアリの観察をすればいい

富沢:試験の勉強だけで手いっぱいという学生も多いと思うのですが、先生はバンドやプロレスなどをやりながらも、ちゃんと試験に受かって学位も取って。そんなふうに動けるコツがあれば教えていただきたいです。

:やっぱり、目標から逆算して動くことかな。大学院は3年で出たかったから、どういう手順でやれば実現できるかを考えました。

富沢:へえ! 3年で出ることは初めから決めていたんですか?

実は僕、国家試験に一度落ちてるんですよ。当時は合格発表が4月で、大学院に入ってから落ちたのがわかって。あれは、ずいぶん天気のいい日だったな……。

富沢:えっ!? そうだったんですか。

:で、そろそろ2回目の国家試験というときに、浪人中も相談に乗っていただいていた教授から電話があって、「戻ってくれば?」と。そのときに交渉したんです。「3年で出たいんですが、可能ですか? ひとつ研究したいテーマがあるので、早めにデータを触ってもいいですか?」って。教授は「結果さえ出せば」と言ってくれたので、あとはそれに向かって行動するだけでした。

富沢:「結果」というと、具体的には?

:影響力の大きい雑誌に論文を出すこと。僕の場合は、歯科がまだ進出していない動物学会の雑誌に論文を出して、それが認められたんです。動物学会の人にもすごく喜んでもらえてね。

富沢:それで本当に3年で卒業できるなんてすごい……。学校ではずっと「頑張らないと国試に落ちるぞ~!」と脅され続けるので、みんな国試浪人することへの恐れがすごくあると思うんですよ。でも、先生のように活躍されている方が一度落ちていると聞くと、少し安心するというか(笑)。

:怯えている学生さんには、「いまキミがやるべき仕事は、全力を出すことだけ」と言いたいですね。それから、自分が何に怯えているのかを分析して、それが自分の力でコントロールできることなのかを考えるのも大事。単に「親に怒られるのが怖い」ってこともあるだろうし。

富沢:なるほど。漠然と恐怖を感じていても、その正体まで突き詰める人はなかなかいないかもしれません。浪人時代はどう過ごされてたんですか?

:もちろん、勉強は頑張りましたよ。でもどうせ1年浪人するなら、今しかできないことをやろうと思って、学生時代にバイトしていたイベント会社でも働いていました。イベントの裏方とか、スタッフのシフト調整、着ぐるみでビラ配り、始球式の手伝い、いろいろやりましたね。

富沢:普通はこれまで以上に「勉強だけに集中しなきゃ!」と悲壮感が出そうなのに、その切り替えはすごいです。そうした経験もあって、今の先生があるんですね。

:転んでもタダじゃ起きない精神ですね。せっかく転んだなら、そこに歩いているアリの観察でもすればいいってことです。

富沢:なんだか勇気が湧いてきました。

「今の自分に何ができるのか」を常に考える

富沢:大学院は解剖学講座だったそうですが、もともと好きな分野なんですか?

:いや、そういうわけでもなくて(笑)。むしろ基礎研究系では技術は磨けないから、学位は取れても将来ヤブ医者になるんじゃないかと初めは不安でした。

富沢:その不安はどう乗り越えましたか?

:論文書くのも面白かったけど、それ以上に担当教授自身に興味があって。30代半ばで教授になり、基礎研究系なのに学長になったりするような、ものすごい人間力のある方だったんですよ。だからここにいる間にその力を吸収しようと思って、隙あらばくっついてガンガン質問してました。

富沢:発想を転換したんですね。

限られた時間を「消費した」と思うか、「投資だった」と思えるかで、その後の人生は全然違いますよね。大学院の間に技術を身につけられないというのは事実だから、じゃあ他にできることを探そうと。

富沢:浪人時代のお話とも通じるところがあります。

:そうそう。医療って、ひとつひとつの問題をよく考え、計画を立ててから動くことが大事だけど、キャリアや経営はその逆。考えすぎてちゃ動けないし、考えた通りになるものでもない。そういう意味で、大学院時代の経験は、いまの仕事にも大いに役立っています。

富沢:歯学部では、もっと先の先まで考えろ、深読みしろと教育されますもんね。患者さんはもちろん、自分を守るためにもそう叩き込まれる。

:医療の場ではそれが正解だし、その脳みそを鍛える期間はとても大事だと思います。ただ、その脳みそしかないのは、まずいですね。医療における「問題解決」と、仕事を作っていくうえでの「価値創造」はまったくの別物で、前者に偏っている人は多いと思います。例えるなら、数式を解くのに手いっぱいで、問いを作るのは苦手という感じかな。

自身の会社を経営するほか、企業顧問も務めるなど多岐にわたり活躍。
自身の会社を経営するほか、企業顧問も務めるなど多岐にわたり活躍。

富沢:その「問いを作る」脳みそを学生のうちに鍛えるには、どうすればいいと思いますか?

:起業する。それがいちばん手っ取り早い方法です。学生の間は、とりあえず国試に受かることだけを考えがち。でも、だからこそ、会社を作ってみてほしいんですよ。「今の自分に何ができるんだろう?」と、考えざるを得なくなるから。

富沢:うんうん。求められるビジネスを考えるのって大変だと思います。

:「今、学生である自分の情報を欲しがっているのは誰だろう?」とかね。そうやって価値を創造する脳を鍛えていく。普通の学生生活でそういう思考を身につけるのは難しいから、軽いノリでサクッと登記しちゃえばいいと思うんですよ。名刺を作るだけじゃなく、自分にちょっと負荷をかける意味で、あえての会社設立がおすすめです。将来、どこかの医院に務めるにしても、自分で経営するにしても、経営者の感覚は大事だから。

富沢:軽いノリで(笑)。たしかに今はお金がなくてもネットを使って仕事ができますし、いいかもしれません!

歯科医師のビジネスチャンスはどんどん増える

富沢:今後の歯科業界については、どのようにお考えでしょうか。

さらに「かかりつけ医」、健康のハブという側面が強くなっていくと思います。だから街の歯科医院がコンビニより多くて良かったですよ。

富沢:僕も、歯科が地域の健康問題の窓口になるべきだと思っています。ただ、逆の傾向も見られますよね。かかりつけ医的な小さい歯科医院はなくして、大きいところだけにするという。M&Aも進むのではないかと。

:進むでしょうね。でも、同時に「かかりつけ医」的な機能をもたせることは可能だと思いますよ。個人の小さい歯科医院って、院長が高齢になると続けていけないじゃないですか。地域をずっと見ていくには、いろいろな人がシフトで無理なく働くクリニックが必要。だから今後は、スペシャリストがいるチェア1台だけの治療型・問題解決型のクリニックか、価値発見型・提案型で予防に注力した大きいクリニックに二極化していくだろうと思っています。大きいといっても全国規模ではなく、地域でのマイクロインフルエンサーみたいな。

富沢:なるほど。歯科医師の勤務形態も変わってくるでしょうか。

:まだぼんやりとしたイメージですが、子育て中の歯科医師が在宅でできる予防や技工などの分野は、広がっていくんじゃないかと思いますね。新米ママ向けの予防歯科教室や診査診断、予後を診るのはオンラインでできるんじゃないかと。まだ業界では浸透していませんが、在宅ワークは将来性のある分野だと思います。

富沢:歯科は現場の仕事だからオンラインではできないと思いがちですが、たしかにそうですね。

先生の愛用パソコン。ペイントはアーティストの池田 英さんによるもの。
先生の愛用パソコン。ペイントはアーティストの池田 英さんによるもの。

:働き方もだし、歯科医師のあり方も変わりますよね。なじみの患者さんを治療していく仕事と、予防や審美のニーズを掘り起こしていく仕事って全然違うから、これまで以上に患者層が広がることによって仕事の幅も広がる。だから副業もしやすくなるし、ビジネスチャンスは増えると思いますよ。

富沢:ますます、技術だけではやっていけない時代になりそうです。

:人としての力は重要になりますね。治療主体の医院では歯科医師と歯科衛生士が上司・部下の関係でしたが、予防が主体になれば立場は同じ。歯科医師の腕が悪かったり、人格的に難があると、あっという間に愛想を尽かされると思います。

富沢:そう考えると背筋が伸びますね。最後に、先生の今後のビジョンを教えてください。

「歯科の観光大使」です。一人でも多くの人に、「これなら歯科に行ってみてもいいかな」「行ったほうが得じゃない?」と思わせたい。コロナ禍では、不要不急の外出は控えるべきと言われて通院を避ける方がいましたが、歯科治療やメンテナンスは不要ではないですよね。そういうとき、僕から正しい情報を発信できたらいいなと思うんです。

富沢:実は、僕も将来は歯科分野から医療経済の情報発信をしたいと思っているんです。

:おお、似た目標があるんですね。

富沢:角先生と向いている方向が同じでうれしい! 今日のお話を胸に、これからの学生生活を有意義に過ごしていきたいです。ありがとうございました!

相談を終えて…

角先生が教えてくれたこと

歯科医師としての自信がなければ、新しい世界に飛び込めない

自分の「なりたい姿」から、逆算して考えよう

問題解決力だけでなく、価値創造力も身につけて

これまでは自分の進みたい道はあるものの、「これでいいのかな? こっちの方がいいかな?」と損得で考えてしまっていました。でも先生に「結果にとらわれるな」と言われたことで、モヤモヤしていたことがクリアになり、自分のやりたいことを心ゆくまでやってみようという気持ちになりました!
最後にお茶目な姿を見せてくれた角先生。
最後にお茶目な姿を見せてくれた角先生。

前後編にわたってお送りした角先生の進路相談室。「治療」の考え方と「キャリア」の考え方は違うというお話がとても印象的でした。皆さんも、ぜひ学生生活の中で、「自分に何ができるのか、何が求められているのか」を考えてみてください。

次回は、TikTokで大人気の審美歯科医・立川惇里先生が登場します!

撮影/服部健太郎 文/伊藤由起

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