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こんな歯科医師見つけました!その② 研究機関勤務 松下健二先生 キャリア

こんな歯科医師見つけました!その② 研究機関勤務 松下健二先生

開業医だけじゃない! さまざまな道で輝く歯科医師たち #3

歯学部卒業後の進路は、「開業医に就職」「大学に残る」だけだと思っていませんか?
実は、それ以外にもいろんな道があるんです!

特集第2回から4回は、実際にさまざまな道で活躍する歯科医師3人にインタビュー。なぜ今の道を選んだのか、仕事のやりがいは何か、たっぷり話してもらいました。

第3回に登場してくれたのは、国立長寿医療研究センターで口腔疾患の研究を行う松下健二先生。大学とは異なる、国立研究開発法人ならではのやりがいとは?


松下 健二 先生

国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 研究所 口腔疾患研究部 部長

松下 健二 先生

鹿児島大学卒業。米国ジョンズ・ホプキンズ大学医学部循環器内科研究員をへて、2005年に国立長寿医療研究センター・口腔疾患研究部部長に就任。口腔と全身の健康の関係について研究を行う。著書に『人生が変わる歯の磨きかた』(KAWADE夢文庫)。

鹿児島大学卒業。米国ジョンズ・ホプキンズ大学医学部循環器内科研究員をへて、2005年に国立長寿医療研究センター・口腔疾患研究部部長に就任。口腔と全身の健康の関係について研究を行う。著書に『人生が変わる歯の磨きかた』(KAWADE夢文庫)。

研究のミッションは、“人に還元すること”

「国立長寿医療センター」は、厚生労働省管轄の研究開発法人。その中にある「口腔疾患研究部」は、国内唯一の歯科分野のナショナルセンターだ。松下先生は着任当初から、「口腔と全身の関係」を研究部のメインテーマに据え、社会の状況や要請に合わせてさまざまな研究を行ってきた。

「初期には口腔と血管の関係に着目し、歯周病の原因菌が動脈硬化や虚血性疾患に与える影響を調べました。その結果、歯周病菌が血液を固める作用を持っていることがわかり、それを抑えることで動脈硬化を抑制する薬も発見したんです。そのときは製品化まで至らなかったんですが、最近その薬が世界的に注目され、研究が進んでいて。もう私の手から離れた研究ではありますが、20年近くたって再注目されているのがすごくうれしいです」

そして今、松下先生の率いる研究部が最もフォーカスしているのは、口腔と「認知症」の関係。中でも、「歯周病とアルツハイマー病の関係」と、「口腔機能の低下と認知症の発症・進行の関係」の2つを柱に研究を進めている。最近の成果としては、歯周病原因菌がアルツハイマー病を増悪させることを、マウスでの実験を通して明らかにした。また、臨床研究では、センター内にある病院の「もの忘れ外来」との共同研究で、認知症の患者さんの口腔状態と脳の状態の関連性を調べている。

「認知症、中でもアルツハイマー病は、発症してから亡くなるまでの期間が短く、さらに、本人も介護する家族も大変な苦痛を強いられる病気です。しかし、薬などの予防法や治療法はまだ確立していません。その中で、口腔の健康維持によって発症や進行を遅らせることはできないだろうか、というのが私たちの研究です。認知症には医科分野からもさまざまなアプローチがありますが、一番身近な『口腔ケア』というところから予防ができれば良いなと考えて取り組んでいます」

厚生労働省の管轄機関という特性上、センターのミッションは、“国民の健康に役立つ”研究をすること。一方で、文部科学省が管轄する大学は、学術的な興味に応じて研究テーマを自由に設定できる。そこが、両者の大きく異なる点だ。

「私たちの研究は、『人に還元する』ことが目標です。だから、研究への評価は大学に比べてすごくシビア。常に『どれだけ人の健康に役立つか』が判断軸なので、評価されるまでに時間がかかるという大変さもあります。でもその分、健康寿命の延伸に貢献できるという夢とやりがいがある。病気を治す、予防する、ということに直接関わる研究をしたい方には、大学よりもこうした研究機関が向いているかもしれません」

松下先生の1週間の仕事スケジュール

月曜日 研究活動。大学・大学院での講義、実験指導。
火曜日 月曜日と同じく、講義や実験指導。講義はZoomで行うことも。
水曜日 歯科衛生士学校で講義をする日。
木曜日 研究活動(総指揮、確認やアドバイス、論文作成、評価)、会議への出席など。
金曜日 研究活動。春や秋は学会参加のため出張が多くなる。
土曜日・日曜日 休日。研究スケジュールは自分で調整できるので、有休も取りやすい。

「口腔」と「全身」の関係に興味を惹かれた

国立長寿医療研究センターが立ち上がった2005年から現在まで、18年間にわたり口腔疾患研究部長を務めている松下先生。学生時代から研究者の道ひと筋……かと思いきや、実は歯学部を卒業する際にはまだ、その先の進路を明確には決めていなかったそう。

「臨床で矯正をやろうか、口腔外科をやろうか、大学院に行こうかなど、候補はいくつかあったんです。迷いながらいろいろな先生に話を聞きに行ったのですが、その中で、『国立予防衛生研究所(現在の国立感染症研究所)』という研究機関に国内留学できるよ、という誘いがあって。そこで、鹿児島大学大学院の保存科に残ることにし、進学後はすぐに東京の研究所に入りました」

国内留学先の国立予防衛生研究所で松下先生が取り組んだのは、虫歯予防ワクチンの開発。その研究の中で、虫歯の原因菌が心内膜炎の発症に関係していることを知り、口腔の状態が全身の健康に及ぼす影響に興味が湧いた。そこで、留学期間が終わって大学に戻った後は、医学部のドクターとのミーティングに参加。医学の勉強をしながら、歯科と全身疾患の関わりを探る研究を続けていた。

「その後、医学部のつながりで縁があって、アメリカのジョンズ・ホプキンス大学の医学部に留学することになりました。そこでは循環器内科に所属して、動脈硬化の研究をしていました。具体的には、一酸化窒素が動脈硬化にどう影響するのかに着目して調べていて、そのメカニズムを明らかにすることができたんです。この成果は、新聞で報道されたり、権威のある学術雑誌に掲載されたりして、非常に注目を集めました」

このように医科分野で充実した研究生活を送っていた松下先生だが、アメリカでの生活が3年ほど経ったころ、帰国を考えて日本での研究ポストを探していた。ちょうどそのころ、現在の所属機関である「国立長寿医療センター」が立ち上がり、その中に「口腔疾患研究部」が設けられることに。それを知った松下先生は初代研究部長のポストに応募し、現在に至っている。

大切なのは、自分が楽しいと思えるかどうか

研究が実際の臨床現場で役立つまでには、試験管内で行う基礎研究、動物実験、そして実際の患者さんで行う臨床研究と、いくつもの段階がある。特に、誰もやったことがない研究に取り組む際には、まずは予備実験を繰り返して方法論を構築することから始めなければならない。その後、実験を繰り返してデータを集め、再現性を確認し、論文を執筆し……と、基礎的な研究だけでも3〜5年。臨床に応用するとなると、さらに10〜20年かかるのが普通だ。

「しかも、10個アイデアがあったとしても、うまくいくのは1個か2個。残りの8個か9個の分の、時間やお金、労力は無駄になってしまうんです。そう考えると、研究というのはかなりの根気のいる仕事です。好きじゃないとできませんし、『この目標をどうしても達成するんだ』という強い意志がないと、なかなか続けられません」

松下先生自身も、研究がうまくいかず、挫折しかけことが何度もあったそう。けれども、そのときどきで取り組んでいる研究課題に大きな意義を感じていたからこそ、諦めずに続けられたという。一方、これまで一緒に研究に取り組んできた歯科医師の中には、「やはり研究は向いていない」と、臨床の道を選んだ人も多くいた。

「他の理系学部出身者と比べて、歯科医師は国家資格を持っている分、“研究が難しければ臨床がある”という気持ちがあるのかもしれません」

しかし、ときには方向転換するのも悪いことではないと松下先生は言う。

「これまで35年以上研究生活をしてきて思うのは、やっぱり、自分が楽しくないと続かないということです。周りに勧められたから、とか、肩書きがつくから、とかではなくて、自分自身が『楽しい』『やりがいがある』と思える仕事を選ぶことが大事だと思います。そして、楽しいかどうか、向いているかどうかは、やってみないとわからない部分も大きいものです。だから、とりあえず興味のあることに挑戦してみて、その上で向いていないと思ったら、歯科医師という資格にとらわれずに方向を変えても良いと思います。自分が幸福感を得られる仕事に就いて、それを長く続けることが、その人にとって一番幸せな生き方なのではないでしょうか。

私たちは、就職だったり結婚だったり、いろいろな選択をしながら生きていますよね。その選択が『正解』かどうかは、そのときにはわかりません。だったら、そのときに自分がベストだと思ったことをやってみればいい。それで、もしうまくいかなかったら、うしろを振り向かずに、新しいことを始めればいいと思うんです。特に若い皆さんには、可能性がたくさんあるんですから。」

研究員として働く歯科医師の仕事データ(国立長寿医療研究センターの場合)

初任給 常勤:年収700~750万円
非常勤:年収約400万円(残業代別途支給)
賞与 常勤:あり
非常勤:なし
勤務時間 裁量労働制(フレックスタイム制)
休日 完全週休2日制(土、日)、祝日。そのほか有給休暇年20日、各種特別休暇、年末年始休暇も。
任期  3年で、再任は1回まで。最長6年の勤務が可能。その後は、部長・副部長クラスの募集を行っていれば応募できる。

研究成果が出るまでには何年もの期間がかかり、さらにそれがうまくいくとは限らない……。それでもあきらめずに続けられるのは、「患者さんに還元する」という大きな目標があるからなんですね。

皆さんも、自分が一番楽しいと思える仕事に出会えることを願っています!

次回は、サンスター財団が運営する診療所で所長を務める先生にインタビュー。どうぞお楽しみに!

文/柳原梢子

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