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歯科医のロッカー サエキけんぞうさんに会い、歯学部の結束力を実感しました。 連載コラム

歯科医のロッカー サエキけんぞうさんに会い、歯学部の結束力を実感しました。

辛酸なめ子の調べたら奥深~い“歯科ラビリンス” #5

子供の頃にした恐怖体験から歯医者さんがトラウマになり、実は歯科医院があまり得意ではないという辛酸なめ子さん。そんな辛酸さんも、口腔の健康と寿命が関係していることを知り、月に1回は予防を兼ねて歯科医院に通っているという。この連載は、そんな辛酸さんが最近の歯科事情や、歯科にまつわるエトセトラを取材し、歯科の恐怖と向き合い、克服していく壮大な物語である。歯科医師になる皆さんも、ぜひこの連載を読み、歯医者さんが怖い患者さんの気持ちと寄り添いながら、奥深い歯科ラビリンスを体感してください。

歯学部での勉強も音楽活動もアドレナリンで乗り切ったというサエキさん

ミュージシャンとして「パール兄弟」「ジョリッツ」などのグループで活躍されているサエキけんぞうさん。実は1985年から1992年頃まで、歯科医師として日大松戸歯学部補綴学第一教室で勤務していた経験があるそうです。今も当時の同窓生や先生たちとの交流があるとか。そんなサエキさんに、歯科大時代の思い出や音楽活動との両立について伺いました。

「怪しいビルディング」NEOニューウェイヴの牙城、ジョリッツ。 バリバリの新曲を揃え、期待の3枚目は音楽性を拡げ、ノリノリの曲が満載!
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「勉強や歯科医も基本、マゾじゃないですか? 自分を追い込めるかが大事。へとへとになってくるとアドレナリンがわいてくるんです」
と語るサエキさん。メガネの奥で理知的な瞳が光っています。サエキさんの音楽やイベントなどを拝見すると、完成度が高くて、ストイックに自分を追い込んでいるのが伺い知れます。

ふだんはあまり飲まないというクリームたっぷりココアとサエキけんぞうさん。
ふだんはあまり飲まないというクリームたっぷりココアとサエキけんぞうさん。


そんなサエキさんにも、人生でスキを見せてしまった経験が……。それは、大学受験の時のエピソード。
「実は医科歯科を受けて落ちているんです。9月には駿大の模試で90%が出ていたんですが……。日本史の問題で『丸をつけて直しなさい』とあったのに、バツをつけて直してしまったんです。当落線は360点で、その部分の点数がまるまる取れず350点……凡ミスで不合格に。結局徳島大歯学部に進学し、在学中は恨み続けていましたが、今では徳島に行けて良かったと心の底から思っています。地方で学ぶのは有意義で、友だちもたくさんできました」

医科歯科に進まれていたら、もしかしたら歯科医の道を追求し、サエキさんと会えるのは診療台の上だったかもしれません。
「今の歯科医は大変だと思いますよ。大学では基礎的なことを教わって、大学を出てから最新の情報収集をしなければならない。例えばインプラントについては生涯勉強し続ける必要があります。研修会は高いんです、1日10万円とか。一つのコースを受けるのに数十万円はかかります」
歯科医の現状にも詳しいサエキさんは、縁あって、徳島大学歯学部で学ばれたあとは日大松戸歯学部の研究生になって、今も籍はそこにあるそうです。
「85年に入ったので、38年くらい籍を置いています。仲の良い先生もいて、時々情報交換しています」

先生方と交流する機会を持つためだとか。歯学部出身の人は結束力が強いのでしょうか。かつて80年代には実習でお互い治療し合うこともあったそうです。美容師さんの学校でお互いカットし合うみたいな感覚でしょうか。さすがに当時は削るまではなくて、麻酔の実習だったそうです。

ちなみに、前、歯科大では歯並びが良い女性がモテる、というエピソードを聞いたことがあったのですが、サエキさんの周りはどうだったのでしょう。

「歯科大に限らないんじゃないかと思いますけど。ただ歯科大出身者の集まりに出ると『紺屋の白袴』じゃないですけど、意外と歯が悪い人がいて驚きますね。10代の頃、ガリ勉で不摂生な生活をしていたのでしょうか。歯はだいたい15歳までの生活習慣で決まってしまいますから

それを聞いて子供時代から虫歯が絶えない自分が、大人になってからも引きずっている理由がわかりました。ちなみにサエキさんのおすすめの、歯のルーティンは「お風呂でゆっくり歯を磨き、鼻うがいをする」だそうです。今からでも取り入れたら少しは改善できるかもしれません。サエキさんは研究室ではどんな治療をされていたのか伺うと、
「すごく昔で基礎的なことしかしていないんで。当時はインプラントが一般的になる前で牧歌的で良かったです。歯医者の場合、マニュアル化された分野で、熱心さがあればやっていける。あとは、難抜歯の時に、あきらめないでやりぬく気持ちが大事です」と、歯科医の心構えについて教えてくれました。

「難抜歯」という単語に緊張して脈が早くなってきたので、音楽活動について伺います。
「80年代に『歯科医のロック』っていう本を出して、卒業してから直感的にどっちか選ばなければと思って、結局歯科医はフェイドアウトしました。歯科医の仕事も好きだったんですが。音楽では野宮真貴さんや小泉今日子さんの詞を書かせていただいたり、キャリアも順調だったので、まあいいかな、と思って」
徳島大学歯学部3年生の時には1年休学し、アルバムを作成したそうです。大学生でミュージシャンなんて人気者になりそうですが……。


「ロックばっかりやっていて成績も良くなかったですし、僕は徳島では小さくなってましたね。実習の先生が怖いっていうか冷たく突き放されて厳しかったです。休学から戻る予定の日はオリエンテーションがありました。前日レコーディングで夜中3時までビクタースタジオにいて、徳島空港に8時着。大学に行ったらオリエンテーションが始まっていたので茂みに荷物を置いてこっそり後ろから入ってギリギリ助かりました。そんな感じで綱渡りの連続でしたね」

でも、卒業して4年後に「パール兄弟」として徳島大学でライブして、母校に錦を飾ることができました。音楽業界で活動の幅を広げると、かつての同窓生たちからリクエストが……。
「『サザンのチケット取ってくれ』っていきなり来て。これが困るんですよ。今、チケットって同じ業界でもそんなに融通してもらえない。たまたまサザンについて記事を書いたから頼めないことはなかったけど、プラチナチケットだったので、無理矢理お願いするのがものすごい大変で。しかも家族分まで。友だちってどこまでしてあげなきゃならないんだろうって思いましたね」

学生時代、周りの友人たちにノートを見せてもらったりして恩義を感じているというサエキさん。でも、その頼んできた人は……
「ノートを見せてもらった人は隣の席で、その隣にいた人だから、それが回り回って、ということなのかもしれませんね。ノート見せてくれるような人はそんなこと頼んでこないですよ」

当時の席の位置まで思い出して、理論立てて考えるのがさすが理系です。学生時代はできるだけ周りの人に親切にして恩を売っておくのが良さそうです。

愛される歯科医になるために、サエキさんはこんなアドバイスをしてくださいました。

「要はイヤがられないことが大事。明るさでアピールしながら、患者さんに接する時は礼儀正しく淡々と。自分の存在を覚えてもらいながらも自己アピールを強くしすぎないのがポイントですね」

それが歯科医としても音楽業界でも、どの分野でも長くやっていく秘けつなのかもしれません。自分の歯も、キャリアも、できるだけ保ちたいものです。




サエキけんぞう

ミュージシャン・作詞家・プロデューサー

サエキけんぞう

千葉県出身。徳島大学歯学部卒。大学在学中に『ハルメンズの近代体操』(1980年)でミュージシャンとしてデビュー。1983年「パール兄弟」を結成。歯科医師として日大松戸歯学部補綴学第一教室に勤務しながら、作詞家、プロデューサーとして活動の場を広げる。モーニング娘。など多数のアーティストの作詞を手掛けるほか、さまざまなカルチャーにも詳しく、新聞、雑誌などのメディアを中心に執筆。大学で講師もつとめ、TV番組の司会、映画出演など多方面で活躍。現在は「ジョリッツ」として活動し、様々なジャンルをミクスチャーした楽曲をリリース。著書に『歯科医のロック』『ヌードなオニオン』『東京百景』など多数。サエキけんぞうさんHP

千葉県出身。徳島大学歯学部卒。大学在学中に『ハルメンズの近代体操』(1980年)でミュージシャンとしてデビュー。1983年「パール兄弟」を結成。歯科医師として日大松戸歯学部補綴学第一教室に勤務しながら、作詞家、プロデューサーとして活動の場を広げる。モーニング娘。など多数のアーティストの作詞を手掛けるほか、さまざまなカルチャーにも詳しく、新聞、雑誌などのメディアを中心に執筆。大学で講師もつとめ、TV番組の司会、映画出演など多方面で活躍。現在は「ジョリッツ」として活動し、様々なジャンルをミクスチャーした楽曲をリリース。著書に『歯科医のロック』『ヌードなオニオン』『東京百景』など多数。サエキけんぞうさんHP

辛酸なめ子

辛酸なめ子

漫画家・コラムニスト。1974年東京都生まれ、埼玉県育ち。女子学院中学校、高等学校在学中から、執筆・創作活動をスタート。武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。セレブ、皇室、精神世界など関心の幅は広く、それぞれ独特の切り口で取材し執筆。著書に『女子校礼賛』『無心セラピー』『電車のおじさん』『新・人間関係のルール』『辛酸なめ子の独断!流行大全』『辛酸なめ子、スピ旅に出る』など多数。

漫画家・コラムニスト。1974年東京都生まれ、埼玉県育ち。女子学院中学校、高等学校在学中から、執筆・創作活動をスタート。武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。セレブ、皇室、精神世界など関心の幅は広く、それぞれ独特の切り口で取材し執筆。著書に『女子校礼賛』『無心セラピー』『電車のおじさん』『新・人間関係のルール』『辛酸なめ子の独断!流行大全』『辛酸なめ子、スピ旅に出る』など多数。

文・イラスト/辛酸なめ子

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