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「噛める喜び」の提供をライフワークに――インプラント科 佐藤明寿先生 キャリア

「噛める喜び」の提供をライフワークに――インプラント科 佐藤明寿先生

歯学部生がスペシャリストに聞く! 各専門分野のシゴト事典 #4

補綴科、矯正科、保存科、口腔外科、小児歯科、インプラント科…ひとくちに“歯科”といっても、その中にある専門分野はたくさん。
将来は何かに特化した歯科医師になりたいけれど、どの分野を選ぶべきか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

そこで本特集では、さまざまな専門分野で活躍する“スペシャリスト”に歯学部生エディターズがインタビュー!
これまでどんなキャリアを歩んできたのか、その分野を究めるためにはどうすればいいのか、たっぷりお話を聞きました。

第4回のスペシャリストは、インプラントに特化した医院を経営する佐藤明寿先生。
先生がインプラントを志す学生に勧めたいこととは?

お話を聞かせてくれたのは…

佐藤明寿先生

南青山インプラント歯科 佐藤歯科医院 院長

佐藤明寿先生

1993年、日本大学卒業。1995年より河津歯科医院 インプラント研究所に入局し、日本を代表するインプラント治療のパイオニア、河津寛氏に師事。2002年に南青山インプラントセンター 佐藤歯科医院を開業し、2019年に現在の所在地に移転。海外での研修・セミナー講師・学会発表などの実績も豊富。ICOI国際口腔インプラント学会指導医・専門医。

1993年、日本大学卒業。1995年より河津歯科医院 インプラント研究所に入局し、日本を代表するインプラント治療のパイオニア、河津寛氏に師事。2002年に南青山インプラントセンター 佐藤歯科医院を開業し、2019年に現在の所在地に移転。海外での研修・セミナー講師・学会発表などの実績も豊富。ICOI国際口腔インプラント学会指導医・専門医。

インタビューしたのは…

R.Oさん

昭和大学3年生

R.Oさん

BRUSH歯学部生エディターズ。大学で写真部に所属するほか、ボランティア活動にも参加している。座右の銘は「初心忘るべからず」。

BRUSH歯学部生エディターズ。大学で写真部に所属するほか、ボランティア活動にも参加している。座右の銘は「初心忘るべからず」。

インプラントは今も進化し続けている

R.O: 春休みにインプラント治療を見学する機会があり、それから興味を持っていたので今日はお話を伺えるのが楽しみです! まず、先生が行われているインプラントの特徴を教えていただけますか?

佐藤: さまざまな症例に取り組んでいますが、特に審美性の高いインプラントを得意としています。口元のバランスを考えた、自然でキレイな歯をつくることですね。

R.O: 症例のお写真を見ても、とてもインプラントだとわからないくらい自然で驚きました。どうやってこのクオリティを追求されているんですか?

佐藤: 審美面は歯科技工士の技術で決まる部分が大きいので、世界的に活躍されている林直樹先生に依頼をしています。ただ、同じ医院にいれば一緒に患者さんを診ながら色を調整できますが、林先生はアメリカ在住なので、ここで撮った写真を基に歯を作ってもらわないといけないんですよ。

R.O: 遠隔でのやり取りだと、指示のしかたが重要になりそうです。

佐藤: そうなんです。写真の色味が本来の色と違うと、仕上がった歯が全然合わなくなってしまう。だからカメラや撮影環境にこだわって、あちらのパソコンの規格に合わせたデータを作って…と細かな調整を欠かさないようにしています。

R.O: すごい…! だからこんなにキレイな歯ができるんですね。先生はかなり早くからインプラントに取り組まれていますが、当時と今とで術式などは変化していますか?

佐藤: だいぶ変わっていますよ。1980年代は、一度インプラントを入れて歯を入れるまでに半年くらい待つ必要がありましたが、ここ10年で即時荷重と言って、その日のうちに歯を入れることが可能になったんです。

R.O: そんなに短時間でできるんですか。

佐藤: 早く歯が入ればその分患者さんの満足度も高くなるし、私たちもうれしいですよね。それから、骨造成の方法も大きく変わりました。昔はもっと長いインプラントを使っていたので顎の骨もより厚みが必要で、骨造成をするときは入院して腰や膝の骨を削らなければいけなかったんですよ。

R.O: えっ、それは大掛かりですね!

佐藤: 今は顎の骨を使ったり、牛骨由来の補填剤を使ったりできるようになったので、骨が足りない患者さんにもインプラントを入れやすくなりました。だから対応できるケースもぐっと増えましたよ。

R.O: すごい進化を遂げているんですね。これからもさらに新しい方法は出てきますか?

佐藤: ひと通りの方法は出てきたんじゃないかと思いますが、特にアメリカではまだまだ研究が進んでいます。ただ、新しくできたものがすべて使えるわけではなくて、これまでも人気の術式だったけれど「インプラント周囲炎になりやすい」ということがわかって、あまり使われなくなったものもあるんです。みんなで常に試行錯誤しながら、今もより良い方法を探している最中ですね。

R.O: これから生まれる治療法も楽しみです!

チームの力で非常事態も乗り越えた

佐藤先生の1週間のスケジュール

診療日 個室でのインプラントオペが中心。すべての治療にマイクロスコープを使うのが佐藤先生のこだわり。隔週水曜日は医療法人 徳真会でも治療を行う。
休診日 木曜日は埼玉県のクリニックへインプラント出張。日曜日は研修会に参加することが多い。オフの日はキックボクシングなどで体力づくり。

R.O: 先生がインプラント治療をしていて、やりがいを感じることは何ですか?

佐藤: 何といっても、患者さんに満足してもらえることです。もちろん入れ歯でもそれなりに噛めるようにはなりますが、その方に合ったものを作るのはなかなか難しい。その点インプラントは成功率も高いし、ちゃんと噛めるようになるんです。人間にとって噛んで食べることは健康上すごく大事なことですから、本当に喜んでもらえますよ。

R.O: 好きなものを食べられるようになるのは、とてもうれしいと思います。

佐藤: そうですね。ただインプラントはとても優れた治療ですが、一方で歯周炎などのトラブルも起きやすいし、一度骨の中に入れてしまうとやり直しもききません。だからその分、適切な診断と処置がきわめて重要。より安全な方法は何か、長期的に良い状態を保つにはどうすればいいのかを常に追求しています。

R.O: 安全性、精密さ、そして審美面と、たくさんのことが求められるんですね。先生がこれまで治療した中で、印象に残っている症例はありますか?

佐藤: そうですね…。一生忘れられないと思うのは、2011年3月11日、東日本大震災の瞬間に治療をしていた患者さんです。

R.O: 地震の瞬間に…。

佐藤: そのときはまさにオールオンフォーの手術中で、患者さんは静脈内鎮静で眠っている状態。ちょうど前歯を抜いて、これからインプラントを入れようというときでした。東京では震度5が観測されましたが、当時は移転前の細い建物に医院があったので、倒壊を覚悟するくらい揺れたんです。どうしようと思いましたが、目の前の患者さんはすでに前歯を抜かれている。歯のないまま被災してしまっては大変だと、手術の続行を決意しました。

R.O: すごい…。

佐藤: スタッフも、麻酔医の先生も「やりましょう」と言ってくれて。余震が続く中、船の上で揺れているような状態でしたが、みんなのおかげで歯の固定まで完了できました。

R.O: スタッフの皆さんも責任をもってやり遂げたいと思われたんですね。

佐藤: はい、本当にあのときはチームに感謝しました。幸い患者さんの予後も良く、次の日も腫れずに済んで。あれから12年たっていますが、今も問題なく過ごせているようですよ。

R.O: それはよかったです! 先生がどれだけ患者さんのことを考えているのかが、すごく伝わってくるお話でした。

患者さんとフラットに話せる関係をつくる

R.O: 来院される患者さんは近隣の方が多いのでしょうか?

佐藤: いえ、むしろ遠くにお住まいの患者さんの方が多いです。九州や北海道、海外からいらっしゃる方もいるんですよ。

R.O: そんなに遠くから! ご自身で調べていらっしゃるんですか?

佐藤: 痛くない治療を受けられる医院を探して来る方もいますし、患者さんや他院からの紹介で来てくださる方もいます。治療後もメンテナンスや、他の歯のインプラントで長く通ってくださる方が多いですね。

R.O: 信頼関係が築けているからこそ、長く通われているんですね。

佐藤: そうだとうれしいですね。信頼関係を築くのって、すごく難しいんです。それまで良い関係ができていても、何かひとつのことで突然崩れてしまうこともある。恋愛と一緒ですね(笑)。

R.O: (笑)。関係づくりって大変なんですね…。患者さんと接する際は、どういった点に気をつけられていますか?

佐藤: スタッフに対しても同じですが、まず威張らないこと。私自身も若手時代に怖い先生をたくさん見てきたので、「自分はこうならないようにしよう」と反面教師にしているんです。もちろん注意や指導はしますが、怒る必要はないですよね。

R.O: たしかに、そうですよね。

佐藤: それから、このクリニックは特に自費診療の患者さんが多いので、その分要求も高くなります。だからスタッフの受付・電話対応も重視していますし、私自身もどんな患者さんが来てもお話できるように幅広い知識を身につけるようにしています。

R.O: 歯科以外のこともですか?

佐藤: そうです。患者さんとフラットにお話をして、プロとして要求に応える。技術を磨くだけではダメなんです。ひとりひとりの患者さんと対等に、腹を割って話せるようになることが、より良い歯科医療のためには大切だと思います。

R.O: はい、私もいろんなことを学んでいこうと思います!

海外にも目を向けて、広く活躍してほしい

佐藤先生の学生時代

1~2年生 父親が作曲の仕事をしていたことから、高校時代は音楽でプロを目指していた。親戚が医療系の仕事をしていたことから歯学部を目指し、大学でも軽音楽部でギターを担当。朝までギターを弾き、授業中は寝てしまうような生活をしていたため、進級はギリギリだった。
3~4年生 バンドを5~6つ掛け持ちしつつ、「このままじゃまずい」と勉強にも力を入れ始める。忙しい毎日の中、寝不足がたたって肺気胸になってしまったことも。
5~6年生 国家試験に向け、勉強に本腰を入れるようになる。「学生時代は好きなことに勤しんでいて将来のビジョンもありませんでしたが、後悔はしていません。海外に行ったときにギターを弾くと、それで覚えてもらえるんですよ。まさに“芸は身を助ける”です(佐藤先生)」

R.O: 先生がインプラントを始められたきっかけは何だったのでしょうか?

佐藤: 日本におけるインプラントのパイオニア、河津寛先生のところで働き始めたのがきっかけです。大学卒業後は別の医院に勤めていたのですが、正直なところあまり技術を身につけられなくて。数年たち、そろそろ開業したいと思ったときに同級生から「うちの医院に勉強しにきたら?」と誘われたのが、河津先生の医院でした。

R.O: そこで、インプラントのすばらしさを知ったんですね。

佐藤: はい。当時はまだインプラントが一般的ではなく、大学などでもそのメリットが認められていなかった時代です。でも、河津先生のところには総入れ歯の患者さんが何人も来て、インプラントを入れて「よく噛める」とすごく喜んでいる。こんなに喜んでもらえる治療ならぜひライフワークにしたいと思い、技術を究めることにしたんです。国内はもちろん、海外にもたくさん学びに行きましたよ。

R.O: やはり、海外でも学んだ方がいいですか?

佐藤: そうですね。日本で質の高いインプラント治療をしている先生は、積極的に海外の情報を取り入れていると思います。今はオンラインでのセミナーも充実しているから、留学するのが難しいときはそういったものを活用するのもいいですね。まずは、そうやって視野を広げることが大切です。

R.O: たしかに、動画のコンテンツもたくさんありますよね。インプラントを学ぶうえで、ほかにやるべきことは何ですか?

佐藤: 良い師匠に出会うこと! 「こんなふうになりたい」と思える人のもとで働いてほしいですね。特に海外では素晴らしい先生がたくさんいますから…そうそう、英会話も若いうちから絶対にやっておいた方がいいですよ。

R.O: なるほど、英会話!

佐藤: いざ海外に行ったとき、やっぱり英語を話せるかどうかで大きく変わってきます。セミナーに出て、講師の先生とお話したら「見学に来なよ」と言ってもらって、そのままアメリカで活躍している先生もいますよ。

R.O: すごい! そうやってチャンスがめぐってくるんですね。

佐藤: 国際的に活躍する人が増えれば日本のインプラントのレベルも上がりますし、ぜひ若い人には語学力をつけてほしいと思います。英語を話せるだけで人間関係も広がって、その後のキャリアにつながることもありますしね。チャンスはいっぱいあるから、常にアンテナを立てていってください。

R.O: はい、積極的に頑張ります! 今日はありがとうございました!

インタビューを終えて

お話を聞いてわかった! インプラント科の仕事は…

優れた治療である分リスクも高いため、適切な診断と処置が重要

自費診療として、質の高い対応も求められる

海外からも積極的に情報を得ることが大切

インプラントの魅力について説明していただき、とても勉強になりました。また、歯科医師として働く上でのやりがいや、人とのつながりの大切さも教えていただきました。
佐藤先生に学んだことを今後の大学生活に生かしていきたいと思います!

語学力を磨いたことで、現在は大使館とのつながりもできたという佐藤先生。広い世界を見ることで、さまざまな道が拓けていくんですね。

次回は、訪問歯科を専門とする先生が登場します。お楽しみに!

撮影/服部健太郎 文/編集部

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