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子どもたちと気持ちが通じる瞬間が何よりうれしい――小児歯科 小口莉代先生 キャリア

子どもたちと気持ちが通じる瞬間が何よりうれしい――小児歯科 小口莉代先生

歯学部生がスペシャリストに聞く! 各専門分野のシゴト事典 #3

補綴科、矯正科、保存科、口腔外科、小児歯科、インプラント科…ひとくちに“歯科”といっても、その中にある専門分野はたくさん。
将来は何かに特化した歯科医師になりたいけれど、どの分野を選ぶべきか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

そこで本特集では、さまざまな専門分野で活躍する“スペシャリスト”に歯学部生エディターズがインタビュー!
これまでどんなキャリアを歩んできたのか、その分野を究めるためにはどうすればいいのか、たっぷりお話を聞きました。

第3回のスペシャリストは、東京都立小児総合医療センターに勤める小口莉代先生。
お子さんの恐怖心を和らげるためにしている工夫とは?

お話を聞かせてくれたのは…

小口莉代先生

東京都立小児総合医療センター 医員

小口莉代先生

2012年、日本歯科大学卒業。昭和大学での臨床研修を経て、2017年に日本歯科大学大学院生命歯学研究科臨床系専攻(小児歯科)修了。クリニック勤務の後、東京都立小児総合医療センターに入職。日本小児歯科学会専門医、日本歯科大学小児歯科学講座 非常勤講師。

2012年、日本歯科大学卒業。昭和大学での臨床研修を経て、2017年に日本歯科大学大学院生命歯学研究科臨床系専攻(小児歯科)修了。クリニック勤務の後、東京都立小児総合医療センターに入職。日本小児歯科学会専門医、日本歯科大学小児歯科学講座 非常勤講師。

インタビューしたのは…

Reinaさん

鶴見大学 3年生

Reinaさん

BRUSH歯学部生エディターズ。歯科助手のアルバイトを通じて、小児歯科の楽しさを知る。将来の目標は、広い世代の患者さんから信頼される歯科医師。

BRUSH歯学部生エディターズ。歯科助手のアルバイトを通じて、小児歯科の楽しさを知る。将来の目標は、広い世代の患者さんから信頼される歯科医師。

患者さんの多くは、治療が困難な非協力児の子どもたち

Reina: 子どもが好きで小児歯科医を目指しているので、お話を伺えるのを楽しみにしていました。まだ小児の授業が始まっていないため、初歩的なこともお聞きするかと思いますがよろしくお願いします! まずは現在のお仕事のお話から聞かせてください。

小口: 小児歯科の専門医として、子どもたちの歯科治療全般を手掛けています。患者さんは地域の先生方からの紹介と、院内からの依頼で来る方が大半ですね。ここは東京都の小児医療の拠点病院なので、小児がんなどで入院している子の周術期の口腔ケアや、児童精神科から来た“歯磨きという生活習慣”が整っていない子たちの治療を行うことも多いです。

Reina: 紹介で来られるのは、一般の歯科医院では治療や対応が難しい症例だからですか?

小口: 症例としては多数歯う蝕の子と埋伏過剰歯のような外科的な処置が必要な子が多いですが、特別な治療を行っているというわけではなくて。それよりも、泣いたり暴れたりで一般の歯科医院さんでは治療が困難な、非協力児のが多いんです。診察台に座るのが大変だったり、お口も開けてもらえなかったり、要は大人のようにスムーズな治療を行いにくい患者さんですね。

Reina: そういった子にはどう対応されているんですか?

小口: 歯科衛生士さんや保護者の方にご協力いただいて、わかる子には時間をかけてわかりやすいように説明します。トレーニングをすれば、普通に治療ができるようになる子もいるんですよ。どうしても無理な場合は安全に治療を行うため、全身麻酔や抑制具を使用して治療を行っています。

Reina: 抑制具を使う頻度って結構多いんですか?

小口: 全身麻酔に不安がある場合は抑制を選んでいただくという感じです。ただ、抑制だと治療回数もかかるし、お子さんにとってトラウマになってしまうこともありますよね。だからそれぞれのメリット、デメリットを詳しく説明し、納得していただいたうえで保護者の方に方法を選んでもらいます。信頼関係を築くために大事な部分なので、説明や話し合いには特に時間をかけています。

小児歯科は“初診時の対応”にかかっている

小口先生の1週間のスケジュール

月曜日 終日外来。チェアタイムは1枠30分で、1日あたりの患者数は15人ほど。
火曜日 終日外来。月2回は小児歯科専門クリニックでも診療を行う。
水曜日 午前中はオペ、午後は外来。
木曜日 終日オペ。主に全身麻酔でのう蝕治療と埋伏過剰歯除去術などの外科手術を行う。う蝕治療は全顎の治療を一気に行うため、オペには半日近い時間を要する。
金曜日 終日オペ。年に数回、出身大学で小児歯科の講義や実習などの指導も担当。
土曜日・日曜日 小口先生は休日。病院では土曜日にも埋伏過剰歯などのオペが行われている。

Reina: なるほど。保護者の方への説明も大切なお仕事なんですね。

小口: そうですね。保護者の方も納得しないと、お子さんの治療には入れないので。だから治療を受ける本人はもちろん、お父さんお母さんと信頼関係を築くということも小児歯科での大切な仕事だと思っています。

Reina: 小児歯科のお仕事って、子どもに対する治療だけだと思っていたのでイメージが変わりました!

小口: そうなんですよ。もちろんスムーズに治療をさせてくれる患者さんもたくさんいるので、あまり不安にならないでくださいね。たぶん、先生との相性やタイミング、雰囲気など何かが合わなかっただけ。もしくは何をするのかわからないから「怖い、いや」と思ってしまっただけで、一般の医院で治療できるんじゃないかなという子も結構いるんですよ。だから小児の場合は歯医者への入り口である、初診時の対応がすごく大事だと思っています。最初に怖がらせないというか、歯医者は安心なところだと思ってもらうことが大切だろうなと。

Reina: 最初が肝心なんですね。初診の患者さんに安心してもらうために、工夫されていることはありますか?

小口: これから授業で習うと思うんですが、不安や恐怖心をやわらげるためにTell-Show-Do法を実施しています。最初に絵カードを使いながら「今日はこんなことをするよ」「この順番で、これしかやらないよ」と説明して、次に実際に使う道具を見たり触ったりしてもらってから治療を行うようにしています。

Reina: あらかじめ説明してもらえると安心できそうです。もし困ったことがあったときは周りの方に相談されるんですか?

小口: そうですね。患者さんと一対一だと結構大変なので、ここでは私を含む3人のドクターと歯科衛生士さんとのチームで診療を行っています。困ったり迷ったりしたことがあれば1日の終わりに行うカンファレンスで治療方針を相談したり、アドバイスをいただいたり、という感じですね。毎日、患者さんの情報を共有し合っているので、担当の先生がオペ中や不在でもフォローし合えるのが心強いです。

Reina: 気軽に質問し合えるのはすごくいいですね! 大変なことや難しいことも多そうですが、小児歯科ならではのやりがいや面白さを感じるのはどんなときですか?

小口: 患者さんが成長していく様子に寄り添えることです。最初は全身麻酔が必要だった子が、長く通い続けてくださるうちにスムーズに治療できるようになったりするとうれしいですね。印象に残っているのは、苦労して治療した子からお手紙をもらったり、障がいのある子が治療後にぎゅっと抱きしめてくれたりしたこと。抑制しながらの治療は私たちも辛いのですが、なんとなくでもやっていることが伝わったのかな、意味があったのかなと思えたときにやりがいを感じます。

Reina: きっと子どもたちにも、先生の想いが伝わったんですね。

「10年たてば一緒」の言葉に励まされた

小口先生の学生時代

1~2年生 家でひたすら勉強に励み、卒業時まで常に上位の成績をキープ。試験のたびに獲得した賞金で海外旅行を楽しむ。勉強に主軸を置く一方で、同級生と遊びにいったり恋愛したりと、大学生としての生活もバランスよく満喫。1年生時は歯科助手のバイトもしていた。
3~4年生 3年生時はレポートに、4年生時はCBT対策に追われる日々。1~2年生時と同じペースで、コツコツと勉強に励む。見れば覚えられるタイプのため、テストの前はひたすらプリントを読み返していた。
5~6年生 5年生時は臨床実習、6年生時は国家試験の勉強に全集中。授業後に5~6人の友達と構内に集まり、一緒に勉強するのがルーティーンに。ごはん休憩時にみんなでわちゃわちゃすることが、いい気分転換になっていた。当時のメンバーとの交流は今も続いている。

Reina: そもそも、小口先生が小児歯科を志したきっかけは何でしたか?

小口: 父が小児歯科専門医の資格を持っているので、その影響はあるかもしれません。そして何より、未来ある子どもたちを支えていきたいという気持ちが大きかったです。

Reina: 大学卒業後は別の大学で研修されたんですね。

小口: はい。日本歯科大学を卒業した後は、医科のある昭和大学へ研修に行きました。なぜ外の学校を選んだかというと、日本歯科大学のことは臨床実習で全部見てしまったので、これまでとは違う世界が見えるコースに行きたいと思ったから。付属の歯科病院を回ったり、小外科や鎮静、地域連携歯科ならではの診療に関われたのはとてもいい経験になりました。

Reina: なるほど、医科の視点も得られる環境だったんですね。研修後は大学院へ進まれたそうですが、その理由をお聞きしたいです。実は将来、開業医に進むか大学院に残った方がいいか迷っていて。

小口: 長い目で考えたら、若いうちに博士号を取ったほうが楽じゃないかと思ったんです。ただ、私の場合は4年間研究のみで臨床ができない環境だったので、手技が遅れるのではないかという不安もありました。そんなときにひと回り上の先輩から「どちらに進んでも10年たてばみんな一緒だよ」と言ってもらえて、そうか!みたいな(笑)。

Reina: 心強いですね!(笑)。

小口: 大学院に行きながらもバイトはできるので、私も当時は一般歯科でバイトをして手技を身につけていました。大学によっては持ち患者さんを診ながら学べるところもあると聞きますが、勉強と研究と臨床を並行するのはかなり大変だと思います。とはいえ、10年たてば一緒と言っても、研修医が終わりたての頃は不安になりますよね。どっちにしてもまだ3年生だし、これからいろいろ見ながら考えていくのがいいと思いますよ。

Reina: ありがとうございます!

先が見えないうちは分野を絞らないほうがいい

Reina: 大学院を卒業された後、小児総合医療センターに入る前はどうされていたんですか?

小口: 卒業してしばらくは大学での仕事や開業医でのバイトを何個か掛け持ちして、フリーランスのような感じで働いていました。当時はまだ専門医の資格も持っていなかったし、先がどうなるかもわからないので、専門性を絞らないほうがいいなと思って。だから小児と並行して一般歯科でもバイトしていました。

Reina: 幅を広げておこう、みたいな?

小口: そうですね。で、1年くらいたった頃、同じ大学の小児歯科学講座出身だった現在の上司からこの病院に来ないかとお話をいただいたんです。ちょうど小児歯科の専門医資格を取るために、どこかで症例を集めなきゃと思っていたので、お世話になることにしました。

Reina: すごくいいタイミングだったんですね。

小口: はい。ずっと小児の分野に携わっていたので、その道の専門医やクリニックから声がかかりやすい環境にいたこともよかったのかもしれません。

Reina: 最後に、小児歯科を目指す学生にアドバイスをお願いします!

小口: 小児歯科は大変なこともありますが、その分うれしい瞬間にもたくさん出会える分野です。とはいえ最初から小児だけに絞るより、視野を広げるつもりでいろいろな世界を見ることをオススメしたいです。Reinaさんにもぜひこの道へ来てほしいですが、ひと通り全部の科を見てから考えたほうが、きっと納得のいく選択ができると思いますよ!

Reina: 私は興味があるものだけに夢中になってしまうタイプなので、とても参考になります!

小口: 今度、改めてうちの病院へ見学に来てください。特にオペ日だと、外来とは流れが違うので勉強になると思います。

Reina: はい、ぜひお伺いしたいです! 今日はありがとうございました!

インタビューを終えて

お話を聞いてわかった! 小児歯科の仕事は…

「歯医者は怖くない」と安心してもらえるような、丁寧な対応が求められる

納得して治療を受けてもらうため、保護者との信頼関係を築くことが大切

治療やトレーニングを通じて、お子さんの成長に寄り添える

小児歯科=単にお子さんを診るだけじゃないという、リアルなお話を聞けてよかったです。大変なことが多い分、やりがいも大きい分野だと知ってさらに興味が湧きました! 今日伺ったアドバイスを参考にしながらじっくり将来を考えていきたいと思います。

興味のある分野を一直線に目指すのもいいですが、先生が教えてくれたように一度視野を広く持ってみると、また新しい発見があるかもしれません。

本特集は10月も継続! 次回は、インプラントを専門とする先生が登場します。お楽しみに!

撮影/榊 水麗 文/松島佑実

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