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“高い技術”は当たり前。それ以上の価値を提供したいんです――矯正歯科 菊池香織先生 キャリア

“高い技術”は当たり前。それ以上の価値を提供したいんです――矯正歯科 菊池香織先生

歯学部生がスペシャリストに聞く! 各専門分野のシゴト事典 #1

「どの器具を使うか」ではなく「誰がどう使うか」

しおり: 表側と舌側で必要な技術が異なるのはよくわかりましたが、実際の治療効果や期間に違いはあるのでしょうか?

菊池: 器具はあくまでも道具なので、器具に優劣があるのではなく、肝心なのは「誰がどう使うか」です。たとえば治療中に器具が外れて付け直す場合、舌側矯正だと表側の倍くらいの工程があります。だから担当する歯科医師に技術がないと、一度に進められる治療が少なくなってしまう。一般的に「舌側矯正には時間がかかる」と言われるのには、こういった理由があるんですよ。

しおり: 難しいだけでなく、早さも求められるんですね。そう考えると、チャレンジする先生が少ないのにもうなずけます。

菊池: そうなんです。でも、手間がかかるからといって避けていると、舌側矯正に対応できる歯科医師がいなくなってしまいますよね。ワイヤーを見せたくないという患者さんはたくさんいるのに、できる人がいないなんてもったいない。だから、ほかの先生もみんなやればいいのにって思いますよ。

しおり: 患者さんにとって、表側に比べたメリット・デメリットはありますか?

菊池: 舌側矯正の器具は一歯ずつカスタムになるので、どうしても費用は高くなります。それから、異物感や舌に当たる痛みもありますね。舌は人体の中でも最も敏感な場所なので、唇や頬よりも痛みが出やすいんです。だから患者さんには「最初の1週間は痛いかもしれないけど、だまされたと思って頑張って!」って伝えています。

しおり: (笑)。痛みにはだんだん慣れるものですか?

菊池: もちろん! 治療が終わって器具を外したらうまく話せなくなるくらい慣れていきますよ。だからこそ、異物感や痛みが出ることをあらかじめお伝えしておくのが大事。「1週間」という見通しがわかると患者さんも我慢してくれるので、途中でリタイアする人はいません。痛いけど、その分ワイヤーも見えないし、食事ごとにマウスピースを外さなくてもいいという最大のメリットがありますから。

しおり: たしかに、「1週間だけ」と言ってもらえると頑張ろうと思えます。矯正中のケア方法はどうですか?

菊池: 表も裏も、器具の周りをひとつずつ丁寧に磨くのは同じです。でも、実は舌側の方が虫歯になりにくいんですよ。

しおり: そうなんですか!?

菊池: 歯の裏側は唾液が多いから、もし同じように磨き残しがあったとしても、表より舌側の方がカリエスリスクは低くなります。これも舌側矯正のメリットかな。もちろん、歯の磨き方やフロスの使い方はきっちり指導していますよ。

しおり: 勉強になりました!

治療で使う3点セットはディスポ製品を採用。清潔さはもちろん、スタッフの滅菌業務を減らすための工夫でもある。
治療で使う3点セットはディスポ製品を採用。清潔さはもちろん、スタッフの滅菌業務を減らすための工夫でもある。

患者さんにとっての「夢の国」をつくる

しおり: 痛みについてあらかじめ伝えるようにしていると伺いましたが、ほかに大切にされていることはありますか?

菊池: 矯正は患者さんとのお付き合いが長くなるので、何でも話せる距離感をつくるようにしています。だから、患者さんのプライベートなお話も結構知っていますよ(笑)。どこに旅行に行ったとか、彼氏がどうしたとかね。

しおり: 本当に何でも話せる関係なんですね(笑)!

菊池: それから、治療で気になることがあればいつでも私にLINEで質問できます。たとえば治療の過程で前歯に隙間ができるときは事前にお話していますが、実際に隙間ができると気になってしまうもの。「思ったより隙間があるけど大丈夫ですか?」「どれくらいで閉じますか?」のように、少しでも不安になったらすぐ相談してもらえるようにしています。

しおり: 次の診療時に質問しようと思っても、それまでモヤモヤしてしまいますもんね。

菊池: そうなんですよ。今はネットで治療について調べることもできるけれど、間違った情報を得てさらに不安になっては困りますよね。だから、患者さんの口の中を最も理解している担当医に聞くのが一番なんです。

しおり: 本当に患者さんのことを考えていらっしゃるんですね。

菊池: 高額で期間もかかる治療なので、患者さんが費やす時間や費用に見合った内容を提供したいと思っているんです。その点で言うと、医院づくりや応対にもこだわりがありますよ。このクリニックでは、トイレのことを「トイレ」や「お手洗い」と言うのは厳禁。では、何て言っていると思う?

しおり: えっ、なんだろう…。

菊池: 答えは「お化粧室」。こう言うと、ワンランク上の雰囲気がするでしょう。それから、患者さんが来たときは必ず「〇〇様、お待ちしておりました」と名前を呼ぶこと。単に「こんにちは」って言われるより、尊重されている感じがしますよね。

しおり: 本当ですね! 名前を呼ばれただけなのにうれしい気持ちになります。

菊池: ほかにも診療器具を見えるところに出さないとか、血液や口紅がついても見えにくいように青いグローブを使うとか、こだわっていることはたくさんあります。

しおり: たしかに、機材が見えないから“歯科医院っぽい”緊張感は感じられないです。リラックスできるというか。

菊池: 技術が高いことや、望んだ治療結果が得られるのは当たり前。それ以上のものを提供しないと、患者さんに選んでもらえません。だからどんな方が来ても気持ちよく、楽しく過ごせる「夢の国」をつくらなければと思っているんです。

しおり: 「夢の国」…、すごくすてきな言葉です!

開業時から使っている青いグローブは、血液や口紅がついたとき患者さんに「申し訳ない」と思わせないための配慮。
開業時から使っている青いグローブは、血液や口紅がついたとき患者さんに「申し訳ない」と思わせないための配慮。

周りと比較せず、信じて続けて

菊池先生の学生時代

1~2年生 上京し、「東京ってすごい!」と実感。ゴルフ部と軽音楽部(ボーカル・キーボード・トロンボーンを担当)に所属し、学生生活を思い切りエンジョイしていた。
3~4年生 ゴルフ部の副キャプテンに就任し、ますます部活に励む一方で、成績も上位をキープ。手先を動かすのが好きなことから、実習も楽しんでいた。
5~6年生 病院実習がスタートし、患者さんと接することに喜びを感じる。いろんな科を回る中で麻酔科にも興味を持ったが、オペ室の寒さに耐えられないと思い、やはり矯正を志す。6年生時は学年一丸となって国試対策に取り組み、互いにわからないことを教え合っていた。

しおり: 私を含め、矯正を志す学生にアドバイスをいただきたいです!

菊池: 矯正は技術が身につくまで時間がかかるので、最初は周りに比べて「出遅れた」と感じる瞬間があると思います。同期はどんどんできるようになって、勤務医として高いお給料をもらっているのに…って。でも、本当に矯正が好きでやりたいと思っているなら、どんなに大変でもあきらめないでほしいんです。信じて続けていれば、きっといつかほかの歯科医師から「矯正の先生はいいな」と言われるようになりますよ。

しおり: 続けることで結果がついてくるんですね、励みになります。では、学生のうちにやっておいた方がいいことはありますか?

菊池: 部活のように、学生の間しかできないこと。そこで出会った仲間との絆は一生続いていくから、大事にしてほしいですね。逆に卒業してからは、異業種の人と関わることが本当に重要! 同じ業種の中にとどまっている人と比べたら、人間力に雲泥の差がつきます。

しおり: 雲泥の差…!

菊池: そうです! だから自分からどんどんアクションを起こして、いろんな世界を見てください。友達の輪を広げていったり、SNSを使ったりね。

しおり: はい、私も縁を大切にしていきたいと思います! 最後に、先生の今後のビジョンを教えてください。

菊池: ビジョンというより、今後もモットーにしていきたいのは「自分の目が届く範囲で、満足度の高い治療をする」こと。それから、「自分だけが気持ちいい治療をしない」ことです。歯科医師にとって“教科書通り”の治療はあるけれど、必ずしもそれが患者さんの望みと一致するわけではないですよね。だから自分のスキルを振りかざすのではなく、「どこをどう治したいか」をしっかりヒアリングして、満足してもらえる方法を探すことが大事。そのためにも、これからも患者さんと距離の近い存在でいたいと思います。

しおり: 私も先生のように患者さんを一番に考えられる歯科医師を目指します! 今日はありがとうございました!

インタビューを終えて

お話を聞いてわかった! 矯正歯科の仕事は…

長期的な計画力と、瞬発的な判断力が求められる

患者さんとのお付き合いが長いため、丁寧なコミュニケーションが大切

治療法の選択肢が多いからこそ、知識のある歯科医師が適切に提案することが重要

舌側矯正に興味があったので、専門家である先生からその魅力や難しさを伺えてとてもためになりました。またホスピタリティや異業種の方との関わりなど、「歯科医師として働く上で大切なこと」も教えていただいたことで、将来のイメージがより強くなりました!

「矯正って、やってもやっても難しい。でもその分、いつまでも面白いんです」と菊池先生。大変なことに挑戦するほど、返ってくるやりがいも大きいんですね。

次回は、口腔外科を専門とする先生が登場します。お楽しみに!

撮影/服部健太郎 文/編集部

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